表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/71

■第7話 アキの恋



 

 

 『ねぇ、ナツぅ・・・。』

 

 

 

自室の机に向かい宿題をしていたアキが、ナツに小さく話し掛ける。

その声色は、どこか遠慮がちで、しかし ”どうしたの? ”と聞き返してほしい

感じのそれで。

 

 

『んー?』 上段ベッドでうつ伏せになり、ポータブルゲーム機に夢中なナツ。

宿題中のアキに配慮して、音は出さずにプレイしている。


一言発するとまたすぐゲームに戻り、たまに舌打ちをしながら画面内の

モンスターを退治するために親指でコントローラーのボタン連打に必死だ。

 

 

少し経ってもアキが二の句を継がないので、一旦ゲームをポーズして、

ベッド柵から顔をひょっこり出し『どした? アキ。』 

ナツから再度、声を掛けた。


しかし、なかなか話し出さない、ふんわりロングヘアの華奢な背中。

机の宿題に目を落としたまま、その背中は微動だにしない。


掴んだシャープペンシルの手も止まり、文字を書く代わりに無意味にコツコツと

ノックしてノートに黒点を付けているだけで。

  

 

ナツは嫌な予感を察し、ベッド上段から梯子も使わず慌てて飛び降りる。

背中を向け俯いたままのアキの肩に手を置いて、後ろからその顔を覗き込んだ。

 

 

 

 『・・・イジメられた?!』

 

 

 

眉間にシワを寄せ、必死の形相で問い掛ける。

思わずアキの細い肩においた日焼けした手に力が入り、指が食い込んだ。


すると、思ってもいなかったその反応に、アキが肩をすくめクスクス笑った。

 

 

 

 『ちがうちが~う・・・


  ・・・そうじゃなくてねぇ・・・。』

 

 

 

少し頬を染め、弱々しく目線を落とした。

そこは、やはり双子。その表情で、すぐナツには分かった。

 

 

 

 『えっ?! カッコイイ人でもいたのっ?!』

 

 

 

ナツは机に向いたアキの膝に手を掛けると、時計回りに90°イスのキャスターを

廻し上半身を屈めた自分と向き合う形にする。 互いの目線の高さが合った。

 

 

 

 『誰? どこ? 同じクラス?? なんて人??』

 

 

 

ナツが目をキラキラさせ、自分のことのように嬉しそうにはしゃいでいる。

顔を近付け、矢継ぎ早な質問が中々やまない。


赤い顔を両手で半分隠しクスクス笑うアキが、その ”想う人 ”の顔を思い浮かべ

ながら目を細め嬉しそうに言った。

 

 

 

 『同じ図書委員の、先輩なの・・・。』

 

 

 『どんな人?? ねえ、カッコイイ??』

 

 

 

アキがひとこと返すと、それにかぶる勢いでナツが質問を続ける。

笑いが治まらないアキがなんとか絞り出すように、言った。

 

 

 

 『なんかね・・・ すごーい、やさしい顔で笑う人・・・。』

 

 

『そうなんだー・・・。』 ナツが心から嬉しそうに、目を細める。

 

 

 

 

  アキが嬉しいと、ナツも嬉しかった。


  アキが楽しいと、ナツも楽しかった。


  アキが哀しいのは心底、嫌だった。


  アキが泣くのは、我慢できなかった。

 

   

  アキには、いつも笑っていてほしかった。

 

 

 

 

ナツはそう思って、16年間生きてきたのだった。

 

 




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ