■第69話 最初から
地方大会予選は、残念ながら敗退してしまった。
しかし、今までの双葉高校の実績をはるかに上回る健闘ぶりに一同笑顔で
満足気だった。
それを一番喜んでいたのは、誰でもない部長のアサヒだった。
前部長やマネージャーも応援に駆け付けてくれて、その日の夜は慰労会で
大盛り上がりした。
皆が笑顔だった。
皆がこの時間を幸せに感じていた。
部員全員の和やかな笑い声響く中、先輩マネージャーが小さくナツに
耳打ちをした。
そして、ふたり連れ立って店の外へ出る。
賑やかな繁華街。 酔っ払いの姿もチラホラ見て取れる。
まだ未成年の一同は勿論アルコールは入っていないけれど、興奮したその頬は
赤くそれはナツも同様だった。
店前にあるガードレールにちょこんと腰掛けて、頬をすぎる夜風の心地良さに
目を細める。
すると、先輩マネージャーが嬉しそうな顔をナツに向けた。
『ちゃんとわたしの ”最後のアドバイス ”きいてくれたんだね?』
先程までのナツとアサヒのやさしい距離感に、目を細めて微笑んでいた
マネージャー。
あからさまに寄り添ったりはしていないのに、それはいとも簡単に
気付かれていたようだ。
『えらいじゃーん。』 そう言って、クスクス笑う。
『アンタは、さ・・・
まわりをパっと明るくする、ってゆーか・・・
笑顔にする力があると思うのよ。 元気にする力、ってゆうか・・・
だから、きっと。
アンタが傍にいることで、アサヒにはプラスだと思うよ。
まぁ、アサヒがアンタのこと好きなのも、
呆れるくらいダダ漏れしてたしね~?』
そう言われてナツが目を見張った。
少し涼んだはずの頬が、瞬時にまた赤く染まってしまう。
『え? 気付いてなかったの??』 マネージャーが大笑いする。
『まぁ、最初ちょっと横道に反れはしたけどさー・・・
アンタが入部するの、アサヒ、首長くして待ってたんだから。
もう、しつっこいくらいに ”小さい奴が、小さい奴が ”って・・・
やっとアンタが来た時の、あの嬉しそうな顔ったら、もう・・・』
ナツが真っ赤になって俯いた。
目線を落とした瞬間、右手首のミサンガが目に入る。
”アサヒが ”想いを込めてくれた、宝物の愛しいミサンガ。
すっかり首まで赤いのが店のネオンに照らされ、浮き出されてしまった。
『ねぇ、アンタはいつからアサヒのこと好きなの~?』
ニヤニヤと緩む顔を隠しもせず、マネージャーが遠慮なしに詰め寄る。
両手の人差し指で、照れまくるナツの脇腹をチョンチョンとつつきながら。
『・・・入学式の、日に・・・
学校までダッシュして・・・ そん時から、タブン・・・。』
照れくさそうに両の手の指先を絡め、口ごもるナツ。
『え? なに、最初っからアンタ達、想い合ってたんじゃないの?
なにそれ~?! バッカみたーい!!』
歯に絹着せぬいつものマネージャー節は、卒業しても健在だった。
体を屈めて大笑いするその横顔は、まるで自分のことのように嬉しそうで
ナツは笑われるのがなんだか嬉しくて仕方なかった。




