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■第67話 アキの告白



 

 

7月上旬、期末試験があった。

 

 

 

ナツは、はじめて真剣に試験勉強をしていた。

部活後、自室でアキと並んで机に向かい、必死に教科書に目を落としていた。

 

『アキ、ここってナンでこうなるの?』 分からない場所はアキに訊く。

アキも同様に、『ココの公式ってどんなのだっけ?』 ナツに教わった。


互いに競い合う訳ではなく、ただふたり、懸命に勉強に取り組んでいた。

ライバル視するのではなく、ふたり一緒に頑張っていた。

それがふたり、言葉には出さずとも嬉しかった。


これが本当に求めてやまなかったものなのだと、痛感していた。

 

 

 

試験が終わり、結果が2年の廊下に貼り出された、とある午後。

その張り紙前にアキとナツの姿。 手を握り合って固唾を呑むふたり。

 

 

 

  1位 オノデラ アキ 


  1位 オノデラ ナツ


  3位 **** ***

 

 

 

見事に同率1位で並んだ名前。

それを見上げ、アキとナツは喜んで抱き合った。

 

 

 

 『ヤッター! アキー!!』


 『すごいねー! ナツぅー!!』

 

 

 

嬉しそうに頬を染めて跳ね上がるふたりを、後方にいたダイスケが目を細めて

嬉しそうに眺めていた。

 

 

ナツは自宅のピアノにも触れるようになった。


アキと並んで少し窮屈そうにふたり、椅子に腰かけ連弾する。

互いの体の側面がぶつかり弾きにくいそれですら、嬉しそうに。


もう10年ピアノ教室に通うアキはやはり上手でナツは指が追い付かなかったが

ふたりは、クスクス笑いながら心から楽しんでいた。

この幸せな時間を痛いほど胸に感じていた。

 

 

 

 

とある夜のこと。


『ねぇ、ナツ・・・。』 アキが上段ベッドのナツに声を掛けた。

『ん~?』 ひょっこり顔を覗かせたナツに、アキは手をひらひら振って

”こっちこっち ”と下段に来てほしいと合図する。


ベッドにうつ伏せになるアキの隣に、ナツも寝転がった。

狭いベッドにふたり、互いの体がぴったり寄り添い合っている。

 

 

『コレ。』 そう指差すアキの手元に、パンフレットがあった。

 

 

 

 

   ”高校交換留学プログラム ”

 

 

 

ナツはそれの意味が分からず、小首を傾げてアキを見る。

アキはうつ伏せの状態で頬杖をつき、微笑んでいる。

 

 

 

 『これ、行ってみようかと思ってるの・・・。』

 

 

 

『・・・え?』 ナツがまだ事態が把握できず、戸惑い顔を向ける。

『お母さんには相談してたんだけどねー・・・。』 そう言うとアキは続けた。

 

 

 

 『私ね、誰も助けてくれる人がいないトコに行って


  色々がんばってみたいの。 成長したいの。


  今までは、ほら・・・ なんだかんだとナツに頼って助けられてたでしょ?


  だーれも知らない人ばかりの中で、


  1年、暮らしてみようと思って・・・。』

 

 

 

やっと話の流れが分かったナツが、慌てて体を起こしアキに詰め寄った。

 

 

 

 『ダメだよ! そんなの・・・ 危ないよ、怖いよ!


  なんかあったらどうすんの? そんな、外国で言葉も分かんないのに・・・


  ぜったい反対! どうしても行くって言うなら、あたしも行く!!』

 

 

 

すごい剣幕でまくし立てる。

眉間にシワを寄せまるで泣き出しそうな顔を向けるナツに、アキは笑いながら

肩をすくめる。

 

 

 

 『ほらぁ~・・・


  ナツがそうやって、私を甘やかすのがダメだって言ってるんでしょ~。』

 

 

 

クスクスと愉しそうに笑っているアキ。

 

 

 

 『私もね・・・ 強くなりたいの。


  ナツみたいに、強くならなきゃいけないの。

 

 

  期間は1年だし、きちんと信頼できるホストファミリーのところに


  ホームステイして、現地の公立の高校に通って勉強するから


  色んな体験が出来るし・・・


  自分に挑戦してみたいの、ひとりでどこまで頑張れるのかを・・・。』

 

 

 

ナツはまだ納得いかない顔で、あからさまにむくれた声色。 


 『・・・いつから?』



すると、アキは口許に手を当ててクスクスと愉しそうに笑った。

 

 

 

 『ん~・・・ 向こうは、9月が新学期なのよね・・・。』

 

 

 

 『9月って・・・ 再来月の、9月??』


ナツの目が落ちんばかりに見開かれた。

 

 

 

 『なんでそんな、大事なこと・・・ 内緒で、進めて・・・ ひどい。』

 

 

 

ふくれっ面で泣きそうな声色のナツ。

枕を掴むと、それを力の加減をしつつアキにぶつける。


アキが可笑しそうにケラケラ笑った。

 

 

 

 『だって、ナツ。 ぜったい反対するじゃな~い?


  ナツ、私のこと好きだから離れたがらないでしょ・・・?』

 

 

 

ナツがついに布団に突っ伏して顔を隠した。

心配と不安と寂しさと哀しさと、色々入り混じって、結果、腹が立って

無言になった。

 

 

『アキなんかキライだ。』 やっと聴こえたナツの声が布団に吸収されて

くぐもる。


クスクスと、いつまでも愉しそうにアキが笑っていた。

 

 


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