■第6話 陸上部
その日の放課後、ナツはジャージに着替えグラウンドへ向かっていた。
部活は陸上部に入部すると最初から決めていた。
まずは部活を見学して、体験入部して、それから正式に届けを出すのが主流
らしいのだがそんな面倒くさい手順を踏むのは性に合わないナツ。
入ると言ったら、入る。
それ以上でも以下でもなかった。
入部届片手にグラウンドへ行くと、バインダーを胸に抱え書類に目を落として
いるマネージャーらしき女子先輩に声を掛ける。
『見学とかいいの? 体験入部とか・・・。』 想定内の問い掛けに、
『いいっス! 全然いいっス!!』 と、かぶり気味で即答で返した。
そして、
『いつから走っていいんスかー?』 と、子供のようにウズウズする脚を
我慢出来ずマネージャーに詰め寄った。
そんなナツに呆れて笑いながら『まぁまぁ。』 と軽くいなすと、
『あ! アサヒー!! ちょっとー・・・。』
グラウンドの隅で準備運動していたジャージの背中に呼び掛けたマネージャー。
すると、その声に振り返りナツの姿を捉えたジャージ。
『あああああ!!!』
ナツを指差して、なんだか嬉しそうに笑う顔。
登校初日の ”猛ダッシュ ”を思い出す。
あの、顔。 陽だまりみたいに、笑う顔。
『やっと来たかー・・・ いつ来んだろって思ってたー。』
フジエダ アサヒというその ”陽だまり ”は、2年の陸上部員だった。
やたらとよく笑う、いつも上機嫌な感じの人だった。
『俺、委員やってっから、木曜だけ遅れるんだけど。
それ以外は、一番最初に来て、一番最後までいるからー。』
そう言って、どこか嬉しそうに目を細めた。
なんだかアサヒの笑顔が眩しくて、そっと弱弱しく目線をはずしたナツ。
すると、アサヒが言った。
『あれ・・・? 誰かに似てる・・・。』
この時はまだ、アサヒが図書委員だということなどナツは知らなかった。




