■第5話 図書委員
その日、アキのクラス1-Aではホームルームで各委員会の担当を決めていた。
クラスから1名ずつ選出される各委員。
担任からの声にも、面倒くさい役割に当たり前に立候補する者など現れず、
結局は匿名の投票で決定する。
既に嫌な予感はしていた。
いつもこうゆう投票になると、優等生気質のアキが選ばれるのは常だった。
アキは、どうか選ばれませんようにと願いながらも、きっとなにかの委員は
やる事になるんだろうと、内心、半分腹を決めているところもあった。
そしてそれは予想通り ”図書委員 ”で落ち着いた。
(もう・・・ ヤだなぁ・・・。)
しかし、不満気な顔は表に出さず、クラスメイトがアキに委員決定の拍手を
贈るのを出来る限りの笑顔で受け入れていた。
作り笑顔だという事に気付く者など、誰一人いなかった。
はじめての図書委員会。
最初の委員顔合わせは3年の教室で行うという連絡が入り、アキはその日の
放課後、慣れない校舎をその教室へ向けて急いでいた。
しっかり場所確認はしてきたつもりが、なんせ生まれながらの方向音痴。
これだけはナツも同じだったが、とにかく迷う。
何処へ行くにも取り敢えず迷う。
広い校舎の巨大迷路のような廊下には、放課後の喧騒と部活動の声が響く。
委員会の時間が刻々と迫っているというのに、既に今、自分が何処にいるのか
分からなくなってしまっていた。
(どうしよう・・・。)
腕時計の時間ばかり気にして、オロオロと泣きそうな面持ちで心許なく
廊下を進んでいた時、後ろで声がした。
『おーい、1年。 ・・・どこ行きたいの?』
アキが自分が呼ばれたのか少し躊躇いながら振り返ると、そこには日焼けした
学ラン姿。首元の学年組章で2年生だと分かる。
『図書委員が、3年C組であるんですけど・・・。』
アキの弱弱しいか細い声に、その2年生は一瞬驚きちょっと笑った。
『あれ。 俺も委員。今から行くトコー・・・』
その言葉に、アキがまるで泣きそうな顔を向ける。 『よかったぁ・・・。』
すると、
『なんだそれ。 オーゲサー・・・』
そう言って愉しそうに笑う横顔を、アキは見ていた。
なぜだか、目が逸らせなかった。
それは、やさしくて温かくて、まるで陽だまりみたいな笑顔だった。




