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■第49話 可哀相なひと



 

 

オノデラ家2階の姉妹部屋に、アキとナツのふたり。

 

 

 

アキはアサヒのケガ後、ずっと肩を落とし元気がなかった。

2段ベッドの下段、自分のベッド脇に腰をかけ溜息ばかり落としている。

 

 

アキがポツリと言った。

 

 

 

 『ねぇ、ナツ・・・ 先輩のお見舞い行った・・・?』

 

 

 

ベッド上段でうつ伏せになりマンガを読んでいるナツ。

ベッド柵から上半身を乗り出すと、そこから少しぶら下がるように

下段のアキへ顔を出した。

 

 

 

 『こないだ陸上部のみんなと行ってきたよ~


  あたし、じゃんけんで負けて


  罰ゲームでお見舞いにエロ本買わされてさー・・・


  もう、最っ悪だった・・・


  まぁ、アサヒ先輩すごい笑ってたから良かったっちゃー良かったけどね。』

 

 

 

思い出し笑いをしながら愉しそうに話すナツを、どこか冷たい目で見たアキ。

 

 

 

 『私は・・・ 先輩が可哀相で見てらんない。 ツラい・・・。』

 

 

 

『そうだね・・・ でもさ、コッチまでメソメソしても・・・』 



言い掛けるナツを遮るアキ。

 

 

 

 『ナツは可哀相だと思わないの?


  あんなに・・・ 一生懸命、大会に向けて頑張ってたんだよ?』

 

 

訴えるような目を向ける。

 

 

 

『・・・可哀相ってゆうのは、ちょっと違うんじゃない?』 ナツのその言葉は

どこか他人事のような響きに聴こえたのかアキが目を逸らして一言吐き捨てた。

 

 

 

 『ナツ・・・ 意外に冷たいね。』

 

 

 

その一言に少しショックを受け、ナツは黙り込んだ。


本当に言いたい事が伝わっていないことに気付いていたが、それをアキに

言うことで言い合いになってしまわないか不安で、二の句を継げない。

 

 

しかし、ナツは口を開いた。

どこか緊張しながら、自分の思いをゆっくりアキへ伝える。

 

 

 

 『可哀相だと思われたくないんじゃないかな・・・ 先輩。


  もし、あたしだったら・・・


  同情されるんじゃなくて、なんてゆーか・・・


  嫌なことをちょっとでも忘れられるように、笑いたいって・・・


  そう思う気がしたから・・・。』

 

 

 

ナツが言葉を選びながら、慎重に続ける。

 

 

 

 『アサヒ先輩が泣き言を言わないってことは、


  あたし達に言いたくない、って意味な気がするし・・・


  だから、周りはバカみたいに笑ってたらいいんだと思う・・・。』

 

 

 

 

アキは俯いて黙っていた。

そして、ひとこと呟いたその声色は、なぜか少し苛立ちの色が見えた。

 

 

 

 『・・・私には、そうは思えない・・・。』

 

 

 


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