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■第45話 ケガ



 

 

アサヒはそのまま入院となった。

 

 

 

半月板損傷により1週間の入院・手術。 

そして術後はリハビリをして、通常の日常生活は1ヶ月以内に送ることが

出来ると医師から言われた。

 

 

 

 『7月に陸上の大会があるんですけど・・・。』

 

 

 

アサヒがすがる様な目を医師に向けるも、スポーツ復帰は3か月前後を

要するとの無情な宣告だった。

 

 

高校最後の陸上競技大会。 そこに照準をあて、今まで頑張って来たアサヒ。


前部長にもペースを考えろと何度も言われていた。

故障したらなんの意味も無い、と。

しかし、じっとしていられずアサヒは走って、走って、走りまくった。

止まっているのが不安で、焦りばかりが募って、とにかく走り込んでいた。

 

 

あの時、ああしていれば。こうしていれば。

今になり募るのは後悔ばかりだった。

きちんとあの時、部長の声に耳を傾けていれば。


新しく部長になったというのに、大事な時に部活のこともおざなりに

なってしまう。

期待はずれで役立たずの自分。 後輩部員にも申し訳が立たない。

 

 

 

 

  (頑張りましょうね! ブチョー。) 

 

 

 

 

手首のミサンガを目の高さに掲げ、笑ったナツの顔が鮮明に浮かぶ。


互いにミサンガを付けた右手でグータッチした、力強い拳。

今は神経質すぎるほど真っ白な病室のベッドに、それはダラリと力なく

垂れている。

 

 

ミサンガに目を落とすと、震える声で小さく、ひとりごちた。

 

 

 

 『・・・オノデラに、合わす顔ないな・・・。』

 

 

 

病室の冷たいベッドに横たわり、天井を瞬きもせず見つめていたら涙が溢れた。

それは目尻へ流れ、枕カバーに次々とシミを作る。


歯を食いしばり、喉元を強張らせ、日焼けした筋肉質の腕で目元を隠した。

 

 

胸の中に重く鈍い暗雲が充満し、それは喉元まで込み上げ息苦しい。

どうしたらこの気持ちが晴れるのか、誰かに教えてほしかった。

 

 

 

生まれてはじめて、こんな気持ちを味わうアサヒだった。

 

 


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