■第42話 卒業
3月。 3年生、卒業。
それは、陸上部の部長や先輩マネージャー他、
3年生部員がいなくなるという事で。
いてくれるのが当たり前に思っていた人たちが、そこに居なくなると
いう現実にまだ慣れることが出来ず、後輩一同は動揺を隠せないでいた。
卒業後のとある日。
3年の先輩陣には、部室に集まってもらっていた。
部室の汚れて少しくすんだ壁には、”先輩ありがとうございました ”の
手書き横断幕。
部室の机上にはそこに乗り切らない程のお菓子や飲み物があった。
後輩部員がお金を出し合って、今までの感謝を込めて先輩を送り出す、その日。
もう制服を着る必要のない、見慣れない私服姿の先輩陣の面々。
照れくさそうに嬉しそうに、どことなく寂しそうなその顔。
しかし、終始やさしい笑顔に包まれた陸上部恒例 ”追い出し会 ”だった。
後輩とケラケラ笑っている部長の元へ、ナツが照れくさそうに近寄る。
『ブチョー・・・ ありがとうございました・・・ いろいろ。』
モゴモゴと呟くナツへ、部長が目を細め笑う。
意味もなくパコンと頭をはたいた。
はたいたその手をそのままナツの頭に乗せると、ガシガシと乱暴に撫でる。
『新部長のゆう事ちゃんと聞いて、しっかり頑張れよ~』
『・・・新部長?』
小首を傾げるナツ。 すると、部長は部室にいる陸上部員に向かって言った。
『ウチの陸上部は、現部長が卒業する時に新部長を選出する伝統がある。
次期、新部長は・・・フジエダ アサヒ。 ・・・アサヒ、頑張れよ。』
全員の目が一斉にアサヒに集まった。
パチパチと拍手の音が小さく、次第にだんだん大きく鳴り部室に響く。
驚いて目を見張り声も出ないアサヒ。
しかし、瞬時にまっすぐ顔を上げ、胸を張って言い切る。
『ありがとうございます!
期待に沿えるよう、頑張ります・・・
部長、3年の先輩のみなさん 今まで・・・ せ~の! 』
後輩全員が声を揃えて頭を下げた。
『ありがとうございましたぁぁぁぁああああああ!!!!』
部長が少しだけ俯いて、唇を噛み締めた。
涙ぐむ先輩マネージャーが寄り添い、そっと部長の肩に手をおく。
その大きな筋肉質の肩は、ほんの少し震えていた。




