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■第39話 買い物へ


 

 

その日。アサヒはひとり、駅前に来ていた。

 

 

 

アキに渡すバレンタインのお返しを探しに出てきたのだが、何にしたらいいのか

サッパリ分からず途方に暮れて、ただ闇雲に色々な店を覗いていた。

 

 

女子が好きそうなアクセサリーショップの前で足を止めた。

カラフルなビーズや石で出来たネックレスやブレスレットが飾られた店頭の棚。

目がまわりそうに鮮やかで、そのパワーに気圧される。


店内を見ている客層の、女子高生やそれより少し上の大学生ぽい女子の姿に

狙う路線としては間違ってはいない事を確認できた。


居心地悪そうに店内に足を踏み入れたアサヒに、派手な格好をした店員が

笑いながら近寄って来る。 

『カノジョさんへのプレゼントですか~ぁ?』 鼻に掛かる声がやたらと

耳障りだが、勝手にオススメを見せて寄越すので、その中から選ぼうと次々と

差し出されるアクセサリーをぼんやり眺めていた。


よく分からなかったが、店員が一押しというそれをなんとなく選び、

会計を済ます。

 

 

 

時間が余ったので尚もフラフラしていると、ごちゃごちゃと賑やかな雑貨屋の

前で足が止まる。


すると、ミサンガの手作りキットがアサヒの目に入った。

よくスポーツ選手が願掛けで手首や足首に付けている、それ。

 

 

今年の春に高校3年生になるアサヒ。

この夏の陸上競技大会が、高校最後の大会になる。


思わずミサンガにでも力を借りてみようかと、そのキットを手に取った。

超初心者用のそれは、3色の紐で自分で編み込んでいくようだ。

あまり手先が器用ではないアサヒ。

自分にでも本当に出来るのか、眉間にシワを寄せ説明書きを注視すると、

なんとなく出来そうな気がしてきた。

 

 

紐の色には各々意味があるようで、入念にそれを読み込む顔は真剣そのもの。

スポーツ運を強くする ”赤 ”と ”青”そして、落ち着きを表す ”白”の3色を

手に取った。

 

 

すると、ふと、あの手が掛かるナツの顔が頭に浮かんだ。


目を離すとすぐサボるし、落ち着きはない。素質がない訳ではないというのに。

バレンタインのチョコも貰ったことだし、指導係として夏の大会用にナツにも

作ってやるかと3色の紐を選ぶ。

 

 

やはり、スポーツ運の ”赤 ”と ”青”。もう1色はどうしようか悩む。


落ち着きは全くないから ”白 ”でもいいが、それだと自分と全く同じに

なってしまう。

ピンクは恋愛運・・・ 恋愛なんかしてるヒマがあったら真面目に走らせねば。

黄色は金運。違うか。 黄緑は友情。友達は多そうだから不要だろう。

緑は癒し。水色は爽やかさ・・・


”オレンジ ”は希望・パワー・笑顔・・・ 

これがナツにはピッタリな気がした。


自分でも気付かぬうちに、自然に顔はほころんだ。

『よし!』 アサヒは自分用とナツ用のミサンガ手作りキットを手に取った。

 

 

 

ナツの嬉しそうに目を輝かせる顔を思い浮かべ、アサヒも思わず目を細めた。

 

 


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