■第37話 ダイスケとの帰り道
いつもの帰り道。
ナツとダイスケはふたり、白い息を吐きながら家路へ向かっていた。
『ぁ。コレ、もうイッコあげる。』ナツがチョコバーを掴んでダイスケへ渡す。
部室で部員に配ってまわった時、ダイスケにも既にひとつ渡してはいたのだが
追加でもうひとつ差し出すと、
『・・・余ったの?』 手の平に乗せられたそれを眺めながら、ポツリ。
『ちがっ!! ダイスケには特に、”日頃のご愛顧 ”でしょーがー・・・』
ムキになって口を尖らすナツに、
『あー、はいはい。』 肩をすくめてダイスケがクククと笑った。
淡い雪がふんわり舞う。
住宅街には等間隔に並ぶ常夜灯が、物足りない感じにぼんやり光を灯す。
『フジエダ先輩には、みんなと同じものしか渡してないの?』
ダイスケがナツに目線を向けて、言う。
『そりゃ、そーでしょ。』 ナツはダイスケの方を向かない。
まっすぐ見つめ歩きながら。
アサヒの話題は極力話したくないのに、何故みんなそう突っ込んで来るの
だろう。
『こっそりあげればいーじゃん。』
『ダメでしょ。』
その頑ななまでの態度に、見てる周りが胸を痛めている事にナツは
気付いていない。
『ほんっと・・・ バカみたいだな、ナツは。』 呆れて溜息をつくダイスケ。
チラっとナツを横目で見て、遠慮がちに続けた。
『アキは・・・? 作ってたの・・・?』
すると、ナツは寂しそうに、でもどこか嬉しそうに目を細めた。
『何回も何回も失敗して、作り直して・・・
アキ。 すっごい一生懸命作ってた。 ガトーショコラ・・・
きっと・・・喜んだだろうね、アサヒ先輩・・・。』
その声色はやさしすぎて、無力なダイスケの胸を歯がゆく締め付ける。
尚も、ダイスケが食い下がる。
『ナツだって・・・
『もう、やめたいよ。』
その言葉を遮って、ナツが声を荒げた。
『あたしだって・・・ もうしんどいから、こんなのやめたい。
なんで・・・ なんで、おんなじ人なんだろ・・・
いっぱいいるのにさー・・・ 学校に男子なんて、いっぱい・・・
なんで、よりによって・・・ もうやめたい。キライになりたい・・・。』
雪が舞う住宅街の真ん中。小さな体はうな垂れて立ち止まる。
すると、
ダイスケがナツの体を抱きすくめた。
小さいナツが、痩せて背の高いダイスケにすっぽり包まれる。
目を見開き、なにが起こったのか頭の整理がつかないナツ。
ただ抱き締められるままに、身を固くして動けずにいた。
『・・・僕にしとけばいいのに。』
それは、写真立ての中で笑う幼馴染みのダイスケの顔とは全く別物だった。
声も出せず息も出来なくなったナツの手から、カバンがストンと落ちて
雪に濡れた。




