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■第32話 合宿2 







走り込みを終えて、宿舎に戻った一同。



夕飯までは少し時間があったため、大部屋で休憩する者、先に温泉に入る者、

ゲームをしはじめる者、みな一様に合宿を楽しんでいた。



マネージャー達が夕飯の準備をする調理場へ行き、なにか手伝えることが

ないか訊いたナツ。

ジャージの袖を腕まくりしてヤル気を見せるナツに、先輩マネージャーが

意外そうに笑う。

包丁片手に大量のじゃがいもの皮むきをするその先輩の手は手慣れた感じで、

ナツは思わず目を見張り見惚れてしまった。




 『なに? アンタそう見えて、実は料理出来る子なのー?』





包丁を握る手はそのままに、ナツに目を遣る。

すると、ナツが答えるより先にダイスケが口を挟んだ。





 『全っ然です。 ただ単に、盗み食いしに来ただけですよ。』




シレっと言ってのけたダイスケの細長い二の腕にパンチして、

ナツが舌打ちした。






マネージャー達が作っているのは、合宿定番カレーライスだった。


辛口のルーが大鍋にどんどん投入されるのを、ナツは不安気な顔をして

見ていた。

鍋をかき混ぜる役目を仰せつかったナツ。

匂いだけでむせて、相当辛いのが分かる。


そんなナツを、ダイスケは横目で見ていた。





夕飯の時間。 部員全員が一堂に会し、食堂でカレーライスを食べる。


双葉高校陸上部で代々受け継がれてきたそのレシピ。

超辛口で豚バラ肉が大量に入っているのが特徴だった。


向かい合わせた長テーブルの列が、2つ。

部員がずらっと並んで座り、スプーンと皿がぶつかり合う音と咀嚼音だけ

響いている。



ナツが恐る恐る一口食べて、目を見張り慌ててグラスの水をがぶ飲みした。

慌てて俯くと、口を横に開き舌を出してヒーヒーと変な呼吸をしている。


すると、隣席のダイスケが横から水のグラスを取り上げ、代わりに牛乳を渡す。


『水は逆効果。 牛乳、飲みな。』 

ポツリ呟き、ナツの情けない顔を見て笑った。






夕飯の後は後片付けをしたり、温泉に入ったり、各々自由に過ごしていた

のだが物好きな誰かの一声でひとつの大部屋に集まり、ド定番の怪談話大会が

はじまった。


怖い話が大の苦手なナツ。部屋の隅に逃げて、耳に手をあて『あーあーあー』と

呟き話が聴こえないようにしている。それでも微かに聴こえてしまう怪談話。

部員の面々はそれを面白がり、わざとナツの近くに寄って話したり大声で

驚かせたりからかって愉しんでいた。


そんなに怖いなら大部屋から出ればいいものを、ひとりで別の部屋に行くのも

それはそれで怖いナツ。

いつもアキとふたりで寝起きしているので、一人の状況には慣れていないのだ。



すると、ダイスケが立ちあがって自分のカバンからiPodを取り出すと

部屋の隅で体育座りをして小さく縮こまるナツに、それを渡した。


ナツは黙って受け取ると、大急ぎでイヤフォンを耳に詰め大音響で音楽を

かけた。

それを先輩マネージャーが、クスリ。笑いながら見ていた。





人数が多い分、中々終わらない怪談話。

途中、野太い叫び声が上がったり、笑い声が響いたりナツは気が気じゃない。





  (・・・牛乳、飲みすぎた・・・。)






体育座りで膝を抱えるナツが、落ち着きなく体をよじらせる。

貧乏揺すりをしてみたりしたが、それも限界とばかりにiPodのイヤフォンを

外すとモジモジと立ち上がり、怪談話をする輪の方へ近寄った。


すると、ダイスケの後ろに立ち、ナツは足先でコツンと胡坐をかくお尻を後ろ

から小さく蹴った。


『ん?』 振り返るダイスケ。

ナツのふくれっ面を見ると、なにも言わず立ち上がり一緒に廊下へ出て行った。




『え? もしかして、トイレ?』 先輩マネージャーが半笑いで言う。





『アイツら兄妹かっ!! つか、4才児かっ!!』 全員が爆笑した。

 

 


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