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■第31話 合宿



 

 

晩秋。

陸上部恒例の秋の合宿が開催された。

 

 

 

山の中をひたすら走り、宿舎に1泊するというこの合宿。

実際は単なる部員の懇親会だったのだが、一応の名目は合宿という

ことになっていた。


あれ以来、毎日部活に顔を出しグラウンド脇にちょこんと立って

アサヒの姿を見ているアキ。 

あまりのベッタリ具合に周りが気兼ねする程だった。


そんなアキは、陸上部の合宿にも参加したがって泣き出し、アサヒを困らせた。

ナツもダイスケもどうすることも出来ず、ただアキを宥めるのに必死だった。

 

 

 

1台のバスに部員全員で乗り込む。


名ばかりの顧問教師は基本的には全て部長に一任していてる為、

最前席で早々とシートを倒し出発と同時に寝始めた。

遠足にはしゃぐ小学生のように、車内は騒がしく終始笑い声に包まれていた。


2時間ほど進むと、本日の宿舎が見えてきた。

山の中にポツンとあるそこは、一見、普通の温泉宿のようにも見えたが、

調理場を使って各々食事を作り食堂で食べるスタイルが合宿らしい。


取り敢えず各自荷物を置くと、マネージャーは調理場に残り夕飯の準備に入る。

それ以外は早速着替えて走る準備を整え山の中の一本道にぞろぞろと向かった。


晩秋の山の空気は澄んでいて、高い空に筋のような雲が流れている。

ひんやりとした風が頬をすぎてゆき、走っていても心地良さに目を細める。

 

 

各々自分のペースで、木漏れび揺れる山道を駆けた。

スニーカーが踏み締めるその道は、敷き詰められたような色とりどりの

落ち葉がシャク シャク。響く。

 

 

すると、まっすぐ駆けていたはずのナツが道を逸れて一瞬消えた。

 

その姿に、目を向けるアサヒ。

実は、ナツの後方をついてその走りを監視していた。

 

 

 

 『アイツは、ゼッタイ。 テンションあがってサボるから・・・


  指導係のお前がちゃんと監督しろよ。』 

 

 

事前に部長から口を酸っぱくして言われていたのだ。

 

 

逸れた脇道を注視すると、草むらにしゃがみ込んでなにかを拾っている。

拾ったそれをジャージのポケットに詰めて、また山道に戻り走り出したナツ。

 

 

 

 

  (なにやってんだ? アイツ・・・。)

  

 

 

 

すると、また少しして道を逸れる。

茂る葉っぱに突進していき、なにかを捕まえた気配。

 

 

 

 『オノデラ、お前・・・ なにやってんだよー?』

 

 

 

さすがに謎の行動にアサヒが首をひねり、声を掛けると

目をキラキラさせて、腕にくっ付けたそれを誇らしげにアサヒに見せた。

 

 

 

 『見てくださいよー! ほれほれ。』

 

 

 

ジャージの腕に引っ付いているのは、オオカマキリ。

『すごくないっスかー! 街ん中じゃ、そうそう見れないも~ん!』 


満面の笑みで。


そして、ポケットに手を突っ込むと先程拾っていたものを掴んで、

その手の平を広げた。

 

 

『クヌギのどんぐり。』 そう言って、嬉しそうにニヤっと笑うナツ。

 

 

アサヒが大笑いした。 『野生児かっ!』 

体を屈め、笑いは中々おさまらない。

あまりに笑われるものだから、ナツまでつられてイヒヒ。笑った。

 

 

 

 

紅葉映える山道を、のんびりペースでふたりで走る。

落ち葉を踏む音と、ナツのジャージポケット内でぶつかり合うどんぐりの音が

やさしい。

 

 

 

 『子供のころ、


  仔犬とかよく連れて帰って、親にめっちゃ怒られてましたー。』

 

 

 

ナツの話に笑うアサヒ。

きっと背丈が小さいだけで、今と然程変わらない子供だったんだろうと

想像する。


『それって、姉妹で?』 頬を緩めて訊くと、

 

 

 

 『ぁ、いや。 アキは動物全般、全くダメなんでー・・・


  あたしだけです、よく怒られてたのは。 


  双子なのに可笑しいっスよね~?』

 

 

 

すると、

 

  

 『お前らー!! なにタラタラ走ってんだっ?! メシ抜くぞっ!!』

 

 

 

ゴール地点で仁王立ちをしている部長が、呆れ顔で笑っていた。

 

 


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