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■第26話 約束の金平糖を



 

 

アサヒが腕をまっすぐ伸ばしその袋を差し出すと、アキが嬉しそうに

満面の笑みを向けた。

 

 

 

アキと約束した金平糖を探しまわった修学旅行2日目のこと。


やっと見付けたそこは女子向けのあまりに可愛らしい店構えで、

足を踏み入れるのにかなり躊躇し買い物に付き合わせた友達から

散々からかわれたアサヒ。


ショーケースに並ぶカラフルな金平糖。

色々なデザインの和三盆糖と色とりどりの金平糖、ユニークな形の琥珀糖が

詰め込まれたそれは、パッケージまで可愛らしくてまるで小さな宝箱のようだ。

 

 

あの日の帰り道、この金平糖のことを嬉しそうに話していたアキを思い返す。

目を細めてやわらかく微笑む顔。


それは、雨の日に紫陽花に微笑んでいたあの顔で・・・

 

 

 

 

  (喜んでくれるかな・・・。)

 

 

 

可愛らしい袋を目の高さに上げ眺め、アサヒの顔まで自然と笑顔になっていた。

 

 

 

 

 

グラウンド脇。 

照れくさそうにアキにその袋を差し出すと、アキは零れんばかりの

笑顔を向けた。

 

 

 

 『ほんとに買って来てくれたんですね・・・


  すっごい嬉しい・・・ ありがとうございます・・・。』

 

 

 

渡された袋を大切そうに胸にぎゅっと抱いて、目を伏せるアキ。

頬はほんのり高揚させて、口許は嬉しそうに緩めて。


幸福感に満たされて、そこだけ気温が少し上昇したのではないかと思う程だ。

 

 

まるで泣いているみたいに潤んでゆくアキの目に見つめられて、アサヒが思わず

目を逸らす。 アキはまだ『ありがとうございます。』 と、繰り返している。

 

 

『ただのお土産だよ。 オーゲサー。』 アサヒは目線をはずしたまま笑った。

 

 

 

『あ。』 一声発して、アサヒが肩掛けカバンに手を入れる。

そしてケータイを取り出すと、指先でスクロールし画像フォルダから1枚写真を

選択してアキに見せた。

 

 

 

 『コレ・・・ 金平糖の店。』

 

 

 

アキに見せようと店舗外観をケータイで撮影していたのだった。

この写メを撮るときも散々友達にからかわれた事を、ふと思い出し

苦笑いが出る。

 

 

『え! 見たい見たい!』 アキがアサヒに近付きケータイを覗き込んだ。


少し屈むと後ろに垂れていた長くやわらかい髪の毛が、ケータイを掴み伸ばす

アサヒの腕にふんわり落ちて触れた。

その瞬間、甘いシャンプーの香りがにおい立った。

白く細い指で長い髪の毛をまとめると、邪魔にならないよう片方の肩から

垂らしたアキ。


そして再びアサヒのケータイに顔を近付け、写メを覗き込んだ。

 

 

 

アキの息がアサヒの手にやさしく掛かる。

その距離に、アサヒの鼓動は早鐘のように打つ。

 

 

 

 アキの長いまつ毛。


 アキの白い首筋。


 アキの甘いにおい。

 

 

 

一言もしゃべらなくなったアサヒを不思議に思い、アキが小さく目を向ける。


すると、目と目が合った。

あと少し身を乗り出せば触れてしまいそうな、ふたりの唇。

 

 

咄嗟に、ふたり。

慌てて体をのけ反って離れた。


アサヒは顔が燃えるように熱くて仕方がなかった。

そっとアキに目を向けると、耳まで真っ赤にして俯いている。

 

 

 愛おしいと、そのとき心の底から思った。

 

 

 

 『ぁ、あのさ・・・ 今度の日曜・・・ なんか予定とか、ある・・・?』

 

 

 

アサヒが、アキをまっすぐ見て、言った。

 

 


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