■第22話 お土産
部活がはじまる直前、グラウンド脇で陸上部1年が集まって仲良く
談笑している。
個性的なメンツが集まっている割りには、なにかと結束力が強い1年軍団。
なにが楽しいのかグラウンドに引っくり返って笑い、ジャージの背中が
汚れてしまっているのが目に留まった。
アサヒがひょっこりそんな輪に首を突っ込んでみる。
『おっと!噂をすれば・・・』 1年軍団のニヤリほくそ笑む顔に、
アサヒが顔をしかめ呟く。
『なんだよ、噂って・・・ うわ~、なんか聞きたくないかも。』
渋い顔を向けるアサヒの腕を掴んで、その輪の中央に座らせる。
『やっぱいいや。』 と、立ち上がろうとするアサヒは、ガタイのいい男子後輩に
ふたりがかりで肩を押さえつけられ、結局ストンとそこに腰を下ろす羽目に。
ニヤニヤと緩む顔を抑えられない1年の面々。
『・・・なに? 俺、ボコられんの・・・?』
360°後輩に囲まれ、居心地悪そうに地面に胡坐をかくジャージ姿のアサヒ。
『アサヒせんぱーーい! もうすぐアレっスね、アレ!!』
1年軍団がみな揃って、ギラギラした目でアサヒを注視する。
腹を空かせて残り物を物色しようとする、そのハイエナのような視線。
瞬時に言いたいことは分かったのだ、が・・・
『んぁ? アレって??』 涼しい顔をしてとぼけてみる。
斜め上方を見上げ、首をひねり、体の前で腕組みして思い当たる節はまるで
ない顔を向け。
すると、1年軍団が一斉にアサヒにぐっと近付き顔を覗き込んでくる。
一同の必死な顔に笑いが堪えられなくなった。 『近い近い近い近ーーーい!』
『分かった分かった。 どーせ、修学旅行の土産だろ~?』
うんうんと一同一斉ににこやかに頷く様に、アサヒが吹き出して笑った。
その中に、ひと際嬉しそうに子供のように満面の笑みで頷くナツの顔を
見付ける。
『そこのお前ー! お前はすぐボケっとしてサボるからな~
特に、ちゃんと真面目に走っとけよ、オイっ!!』
ナツを指差し、アサヒが笑う。
急に指されて目をパチクリと驚いたナツ。
『あー・・・ はいはい。』 嬉しさを隠そうと、思わず気怠げに返事をした。
するとアサヒが立ち上がり、輪をかき分けナツの目の前に立った。
『 ”はい ”は1回だろがぁー・・・ 1年坊主がぁー・・・』
そう言って、ナツの両ほっぺをつねって引っ張った。
やさしく両サイドに引っ張られ、つぶれたカエルのように無様な顔のナツ。
(痛い。痛いよ・・・ 心臓、痛いってば・・・。)
『なんて顔してんだ、お前~・・・』
真っ赤になって情けない顔を向けるナツに、アサヒが大笑いして目を細めた。




