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■第19話 指導係



 

 

グラウンドから、校舎正面の高い壁に掛かる時計に目を向けたナツ。


だいぶ前の卒業生から寄贈されたらしい卒業記念品として設置された、

大きな屋外時計。

時刻は4時をまわった。

 

 

 

 

  (委員会、はじまった・・・。)

 

 

 

 

走りながらも、時計ばかり気になり全く集中出来ない。


どんどん他の部員に追い抜かれていくナツに、見かねた陸上部長がベンチ

から軽く注意する。

ペコリ。小さく頭を下げてスピードを上げるも、次第にその足は再び速度を

落とした。

 

 

 

 

  (部活・・・ 顔出さないのかな・・・


   委員会の後は、ふたりで・・・ どっか行ったりするのかな・・・)

 

 

 

 

『オノデラー、ちょっと来ーい。』 ついに、部長呼び出しが掛かる。

 

 

ベンチの前に仁王立ちして体の前で腕を組む部長は、親に叱られる覚悟を

決め兼ねる幼子のようにモジモジと体をよじるナツの姿に、思わず笑って

しまいそうになる。

しかし、そこはグっと堪え真面目な顔を無理やり作った。


バツが悪そうに部長の前に立つと、『すんません!気を付けます!』

部長の言葉を待たずに畳み掛けるようにナツが言う。

 

 

 

 『指導係がいないと、マトモなペースで走れないのかお前は。』

 

 

 

その一言に、『指導係?』 オウム返しに聞き返す。

そんな係があるなんて初耳だ。


すると部長は、堪え切れず笑って言った。

 

 

 

 『お前の指導係だろ。 ・・・アサヒ。』

 

 

 

その言葉に、目を見開くナツ。

真っ赤になって、分かり易くうろたえた。


落ち着きを失いオタオタする姿に、部長が半笑いで言う。

 

 

 

 『なんだ、どーした? お前、真っ赤だぞ?』

 

 

 

更に首まで赤くしてせわしなく瞬きするナツとニヤけ顔の部長の間に、

先輩マネージャーが割って入った。

ナツの小さな体を抱きすくめるように自分の体で隠し、部長に見えないように

遮るとマネージャーはナツの真っ赤な顔を覗き込むように見つめ、

背中で部長に言う。

 

 

 

 『オノデラをイジめないで下さいよ~、 部長~ぉ・・・』

 

 

先輩たちにイジられ可愛がられるナツを、少し離れたところでダイスケが

見ていた。

 

 

 

 

 

夕暮れのグラウンドを部長にぴったり隣につかれて、ナツが走る。

『チョー走りづらい。』 と聞こえよがしに文句を言うと、部長にパコンと

頭をはたかれた。


またペースを落とさぬよう、部長自ら監視しながら並走していたのだ。

 

 

まるで二人三脚のようにナツと部長が走っていると、委員会を終えたアサヒが

グラウンドに足を踏み入れ、その不思議なふたりの光景を眺める。

 

 

『なんスか?あれ・・・。』 


頬を緩めるアサヒに、先輩マネージャーが言った。

 

 

 

 『指導係がしっかり躾けないから、あーなるんでしょーが。』

 

 

 

アサヒが目を細め、叱られながら部長と走るナツを笑いながら見つめていた。

 

 


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