■第17話 特別な人
翌朝、アキとダイスケが学校へ向け、のんびりふたりで歩いて登校していた。
ふんわりと長い髪の毛を歩くリズムにやさしく躍らせて、アキは今日も
にこやかに佇んでいる。
ダイスケはそれを目の端で見ていた。
世間で言うところの ”女子力が高い ”とはこういう事を言うんだろうなと
ぼんやり考えていた。
ふと、昨日のナツとの遣り取りを思い出し、なんとなく探りを入れてみる。
『図書委員になったんだって?』
『ぁ、うん。 そうなの~』
一瞬ダイスケの方を見て、ニコっと微笑むアキ。
『なんか、面倒くさそだね・・・ ヤじゃないの?』
嫌じゃない理由を聞き出す為のダイスケの誘導作戦に、アキは少し困ったような
しかしどこか嬉しそうな顔で言った。
『ん~、確かに。 めんどくさいけど・・・ でも・・・。』
『でも?』 すぐさま、アキの二の句をいざなう。
『・・・ちょっと。 いいなって、思う先輩がいて・・・
だから、委員は面倒くさいんだけど。
嫌なトコばっかじゃないってゆうか・・・』
『へぇ・・・ そうなんだ・・・。』
すると、更にダイスケは即座に質問を続け、アキの反応を伺う。
本来、最も知りたいのはこの問い掛けで生じる化学反応なのだけれど。
『ナツはさ。 いないのかな・・・? そうゆう人。』
すると、アキはケラケラと笑った。
自分の言葉に自信を持って、まるでダイスケを諭すかのように言い切る。
『ナツは、いないよ。』
アキは眩しそうに目を細めて微笑んだ。
『だって、そんな人が出来たら・・・
ゼッタイ。 一番に、私に教えてくれるもんっ!』
そう断言するアキの、一点の曇りもない澄みわたった目。
そんなアキを見ていられなくて、ダイスケは思わず俯いた。
ナツの、眉尻を下げ情けなく笑う顔が浮かんで消えた。
すると、アキが思い出したように少し笑って言った。
『そう言えば、昨日。
ナツが、なんかダイちゃんに怒られたってしょげてたわよ。』
詳しい事まではアキに話していないようだったが、ナツは昨日ダイスケから
言われた一言を気にしているようだった。
下唇を突き出し不満気に目をすがめて、机に顎を乗せるナツの昨夜の背中を
思い出しながら、アキが言う。
『ダイちゃんてさー・・・ 昔っからナツにはキツいよね~?』
ダイスケが面食らって少し口ごもる。 『そんな事ないと思うけど・・・。』
『そんな事あるでしょ~・・・
ダイちゃんがキツい物言いするのってナツにだけだもん。
・・・でも、きっとさ・・・』
アキが目を細めて笑う。
それは、嬉しそうで羨ましそうで、どこか諦めているような顔にさえとれる。
『きっと、そっちの方が・・・
遠慮がない方が、ほんとのダイちゃんなんでしょ・・・?
・・・ナツは、特別なんでしょ・・・?』
真っ直ぐアキに見つめられて、ダイスケは目を逸らした。
そんなんじゃないと言い掛け、しかし自分でもなぜナツにだけ無性にイライラ
してしまうのか分からず、ダイスケは結局なにも言えずにいた。
実際、アキにはキツい口調で言ったことなど一度もないのだ。
ダイスケが俯き、ほんの小さく溜息をついた。




