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■第15話 マネージャー



 

 

その日、部活に顔を出すとジャージ姿のダイスケが先輩マネージャーの横に立ち

なにやら話し込んでいた。

 

 

 

 『アンタ、なにやってんの?』 

 

 

 

ナツが不思議そうに駆け寄り訊ねると、

先輩マネージャーが『なに。アンタ達、知合い?』 と目線を向けた。


同じクラスで、おまけに幼馴染みだという事を話すと、先輩マネージャーは

胸に抱えた薬箱が傾げないよう気にしつつ、可笑しそうに笑って言う。

 

 

 

 『そーゆう ”シチュエーション ”なら、普通、逆じゃないの~?


  女子の方がマネージャーでしょ。


  ・・・ほら、あの有名野球マンガとかでもさぁ~・・・』

 

 

 

『え?』 言われている意味が分からないナツが小首を傾げてダイスケを見た。

 

 

 

 『僕。 ・・・陸上部のマネージャーになったから。』

 

 

 

ダイスケはサラリ言うと、ナツに背を向け先輩から薬箱を受け取りベンチの方に

向かおうとする。


『ちょー・・・っと。』 ジャージのその背中をむんずと掴むナツ。

 

 

 

 『・・・きーてないし。 てか、なんで急にマネージャーなんかやんの??』

 

 

 

すると、ダイスケはナツに掴まれたままの背中をほどくように少し身をよじり、

ナツを真っ直ぐ見て言った。

 

 

 

 『応援するの、得意だから・・・ 僕。』

 

 

 

そう言う顔は、どこか怒っているみたいで、ナツは一瞬たじろぎそれ以降は

何も言えなくなった。

 

 

 

 

 

ベンチに薬箱を置いて中身を広げ、先輩マネージャーから教わった薬の整理を

していたダイスケ。


すると、見掛けない新人の姿にアサヒが近付いて来た。



 『あれ、新入部員? そんなん放っといて、走ればー?』

 

気遣って声を掛ける。

 

 

その声に振り返ると、後ろに立つ日焼けしたジャージ姿に驚き目を見張る

ダイスケ。

 

 

 

 

  (こないだアキと一緒にいた人・・・ 陸上部だったんだ・・・。)

 

 

 

 

立ち上がって挨拶をし、新しくマネージャーとして入部した話をすると、

『マネージャー??』 今まで男子がマネージャーになった事など無かった為

アサヒは驚いた顔を向けた。

 

 

 

 『僕。 ヒョロヒョロのもやしっ子なんで、マネージャーでいいんです。』

 

 

 

ダイスケは抑揚のない声色で言う。


そして、

 

 

 

 『・・・関係ないですけど。 僕・・・


  オノデラ アキ・ナツと、幼馴染みなんで・・・。』

 

 

 

少し目をすがめて、ダイスケは言った。

その若干強めの言様に、アサヒは少し気圧され意味もなく小さく笑って返した。

 

 

 

 

 

ナツがグラウンドを走る。


その数ⅿ先には、アサヒのジャージの背中。

もっとスピードを上げて追い付くことだって出来そうなのに、ナツは決して

足を速めない。

一定の距離を保ったまま、その背中について走っている。


まるで、それをひたすら見つめながら走っているかのように。

ただ見つめていられればいいかのように。

 

 

ダイスケは、苛立ちながらそんなナツを見つめていた。

グラウンド脇にハードルを等間隔に設置しながら、横目ではその姿をしっかり

確認している。


子供の頃からなにも変わらないナツ。

もどかしさにも似たイライラを抑えられず、ダイスケは唇を噛み締めた。

 

 


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