■第11話 オノデラさんとオノデラ
アキとナツを並べて見比べ、アサヒが可笑しそうに肩を震わせて笑う。
『なーんか、どっかで見た気がしてたんだよなぁ~・・・』
清楚なワンピース制服姿のやわらかい感じのアキと、ジャージの日焼けした
元気印ナツ。
ふたりは、髪型や佇まいこそ全く違うけれど、顔の造作や声色。
一瞬向ける表情は同一。
そう言えば、当たり前だが苗字も一緒だ。
『オノデラさんと、オノデラになんで気付かなかったかな~、俺・・・。』
アサヒはいつまでも楽しそうにケラケラ笑っていた。
日焼けして引き締まった首元の喉仏が、笑うたびに微かに動く。
この ”さん付け ”のオノデラはアキの事であり、”呼び捨て ”のオノデラは
ナツだった。
それを恥ずかしそうに、どこか嬉しそうに目を細めて見つめる、アキ。
そんなアキに、どことなく哀しげな目を向ける、ナツ。
一瞬、アキがナツの沈んだ目線が気になり、顔を覗き込む。
慌ててナツが瞬時に明るい笑顔を向けた。
そして、部活終わりの帰り支度をしているアサヒに声を掛ける。
『アサヒ先輩~。 マックでも寄って帰りませ~ん?』
するとアサヒは、『おぉ、いいねー!』 と快諾した。
散々走り込んだ若い肢体は、夕暮れの時間には空腹で倒れそうなほどだった。
”マック ”という固有名詞を聞いた途端、アサヒの腹の虫が瞬時に反応して
ギュルギュル鳴り、3人で顔を見合わせて笑った。
3人揃って、駅前のマックへ向かう。
ロータリーでバスを待つ人の列の間をすり抜け、丁度一番混み合う駅前の道を
アサヒが先に進み、アキとナツはふたり並んでその背中について歩いた。
この時間帯のマックは学生で混み合っていて、注文するにも少し並ぶ。
店員頭上に掲げられた期間限定商品のパネルに目を向け、なにをオーダー
しようか決めかねながら、ケータイアプリでクーポンもチェックするアサヒ。
その隙にナツは2人掛け席を確保しに注文列を離れ、空いたテーブルにハンカチ
とポケットティッシュで場所取りをした。
すると、ナツがいまだ先に進まない注文列に戻り、アサヒとアキに言う。
『ぁ、ちょっと電話入って。 急用出来ちゃったんで、スンマセン!
・・・先輩、アキだけヨロシク頼んマーっス!』
そう言うと、さっさと店を走って出て行ってしまった。
アサヒは小首を傾げ、アキは頬を赤らめ困った顔を向けていた。
賑やかな駅前を抜け、夕暮れの静かな住宅街をひとり自宅へ向かうナツ。
ギュルルル。と腹の虫は鳴り、その顔は物悲しげに沈んでいた。




