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■第10話 部活



 

 

金曜はアキが図書委員の当番の日だった。

 

 

 

当番は、貸出カウンターに座り閉館までの時間、受付諸々を担当する。


本を借りに来る生徒なんて数える程で退屈な時間だったが、アキはその時間は

読書に充てようと割り切り、そこそこ有意義に活用していた。

 

 

夕方6時まで拘束され、帰る時間はいつものそれより当然遅くなる。

アキが、金曜はナツの部活終わりを待って一緒に帰ると言い出したのは

昨夜のことだった。

 

 

ナツは図書室でアサヒを見掛けた時、アキに元から知合いだったのか訊かれ

咄嗟に ”陸上部で一緒の先輩 ”と言い切っていた。


”ただの先輩の一人 ”と・・・

 

 

 

その日、グラウンドを走りながら、ナツはどこか心此処に在らずだった。

 

 

  アキは、アサヒのことが好きなようだ。

  アサヒの、ことが・・・


  ナツは。

  ナツの気持ちは、ほんとうにアキのそれと同じなのだろうか。


  違うかもしれない。


  きっと、違う。

  アキのそれより、もっと、気軽な感じの。 軽い感じの。

 

 

  軽い、感じの・・・?

 

 

 

腕を振り、足は前に踏み出してはいるけれど、気持ちは全く前には進まない。

タラタラ走っている訳ではないけれど、かと言って真剣さも見られなかった。

 

 

すると、突然。

『痛っ!!』 後頭部に何かに打ち付けられたような鈍い痛みが走った。 


後頭部を押さえ振り向くと、そこにはアサヒの姿。

後方から静かに近付き、腕を伸ばしてナツの頭にラリアットを食らわした

のだった。


『なーに、ボケっとしてんだよ?』 笑いながら、ナツを追い越してキレイな

フォームでどんどん走り進んでゆく。


ナツが慌てて全力でアサヒを追い駆け、追い付く。

アサヒはナツに気付かれない程度に速度を落とし、並んで走る。

そしてチラっと横目でナツを見ると、小さく笑って再び猛ダッシュを掛けた

アサヒ。

 

 

アサヒの大きくて適度に筋肉がついたジャージの背中が、どんどん小さく

なってゆく。


その駆け抜ける背中は、速すぎて、遠すぎて、眩しすぎて、ナツには決して

追いつけないような気がした。

 

 

 

 

 (今のうちに・・・ 今なら、きっと・・・ まだ、今だったら・・・。)

 

 

 

その時、

 

 

 

 『ナーツーぅ・・・ がんばれーぇ!!』

 

 

  

グラウンド脇から、ナツを呼ぶ声。


陽が翳りはじめた夕空に、それは小気味よく響き渡った。

自分の声色と同じで、しかし話す口調や選ぶ言葉はまったく違う、アキの声。

 

 

その声に、アサヒが足を止めて振り返り遠く見つめた。


その顔は少し驚いて、少し笑っているようにも見えたけれど、夕陽が反射して

実際のところはよく分からなかった。

 

 


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