光秀との密談
ちょい長め
僕は剛輝に覚悟を問うた話し合いから、自室にてしばしの休憩を挟み
ある目的地に向かって真っ直ぐに向かっていた
そして、目的地の扉の前に立ち
「光秀。信長である。話がある」
その部屋の主に呼びかけた
「信長様!どうぞ。」
凄まじい反応の速さだな
障子の裏に待機でもしてなければ開けられるタイミングでは無かったぞ
「ずいぶんと早い対応であったな」
「はい。信長様をお待たせするわけにはいきませんから!」
「そ…そうか」
む、無邪気だなー
この娘が本当に本能寺の変を起こすのか?っと疑問に思ってしまう程に
「というのも、偽りなき真実にございますが」
ん?光秀の言葉には続きがあったようだ
「何者かの足音が私室に近づいて来ましたので障子の前にて忍んでおりました」
本当に待機してたのかよ
でも、なんで…
「何故。そのような事を?」
「ここは敵地ではありませんが安息の地とは言えないからです」
あーなるほど
言いたい事はなんとなくわかった
「私がここへきてまだそれ程の時は経っておりません
そして、私は敗軍の武士でもなければ信長様に正式に士官しているわけでもありません。私は今も齋藤道三の使いとして見られているのでしょう。そして、その見方は正しいのです」
つまり…
「つまり、お主は足音を捉えるなり武装していたと申すのか」
「武装と呼べる程のものではありませんが。この着物の下には鉄甲を付けておりますし刀は常に携帯しております」
この可憐な水色の着物の下に鉄甲着込んでんのかよ…
いや、これは僕の落ち度だよね
「すまなかった」
僕は頭を下げた
「の、信長様!?お顔をお上げください!!」
光秀はあわあわと慌て始める
そして僕の肩を掴み力任せに胴を上げようとする
僕はその力に逆らわず光秀と目をあわせた
「我の配慮がたらなんだ。今すぐに天守近くの部屋をあてがおう
天守近くなら我の信用をしているものが大半を占めておる上
この部屋程は、人通りも少なかろう」
「そんな!家臣でもなければ配下でもないもののへの対応としては十分過ぎるほどの対応です!感謝をする事はあれ不満など一抹もございません」
「遠慮するでない。むしろ我がそうしたいのだ」
「ぇ…ど、どうしてですか?」
光秀は俯き加減で小声で理由を問うてきた
それに僕は答えを返す
「光秀よ。我にはお前の力が必要なのだ!」
「わ、私めの力が…信長様は必要としてくださるのですね!」
「ああ。武力、知力、政力その他の事柄にも他の配下の者達とは比べ物にならない才を感じている」
これは歴史が証明している
僕達が介入して未来に歪みができていたとしても1つ個人の力をねじ曲げるなんて事にはならないだろう
もちろん。未来を変えたことで努力を怠り埋もれるというのはあるだろう
しかし、光秀は天才だ
そして、努力もしている。そんな有用な人物を飼い捨てるなんて勿体ない!
もしも、信長に未来人が光秀は将来あなたに謀反を起こすと教えてあげたとしても信長は光秀を家臣に加えただろうと思う
むしろ、優秀である事は普遍なき事実であるならば
謀反など犯さぬように強く縛り付ければいいと言うはずだ
僕には、信長の記憶や考え方を持つ僕だから
断言する。そして、一国の主である僕はならなければならない
織田信長に
「信長様は私の力に期待されているのですね!」
「ああ」
「あぁ~光秀は感激ですぅ~やはり、私の真の理解者は信長様です!」
「ついてこい光秀!我に早速力を貸せ!」
僕は踵を返す
「っっ!!はいっ!信長様!」
いたく興奮している様子の光秀が僕の3歩後ろをついてくる
その足取りは、今にもスキップをしそうな感じだ
僕は、やるぞ
明智光秀を生かしたまま
必ずや手中に収めながら。そして、信長の死の運命を乗り越える!
二兎を追う者は一兎をも得ず?
信長がそんな事でいいのか?
否!
信長なら
二兎を追って二兎を捕まえて三兎目も四兎目を捕まえる
それこそ、僕の憧れた信長であり
僕の目指すべき覇道だと思う
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「光秀。腰を落とせ」
「ハッ!」
僕の対面に光秀が正座をする
「話に入る前に申しておく事がある」
「はい」
「我はお主を…明智光秀をゆくゆくは重臣として我の隣にて士官したいと考えている」
「っ!?大変嬉しく思います」
仲間達には内緒だが悪いが本人に早めの布石を打たせてもらう
みんなごめん
「だが、如何に道三殿の小姓で信用たる人物とて、武勲などの成果を上げていない者を重臣として招き入れる事はできぬ」
「はい。それは弁えております」
「うむ。少し話は変わるが我等織田軍は日ノ本の中間地点である美濃を手中に収めるつもりである」
「はい。道三様から、美濃は信長様に譲るとの言伝は私も耳にしました」
そう。すでに美濃は織田軍の勢力下にある
政治的な意味では…
「いや、正確にはまだ、我が手中には収まっておらん」
「嫡男の義龍様ですね」
「ああ。その通りである」
ノータイムで答えに辿り着くのは流石だな
まぁ考えれば分かる事ではあるが、予め頭に考えが住中しておらず
話の流れでサッと答えを出すというのはできる人と出来ない人を選ぶ
「我は道三殿には申し訳がたたぬが、齋藤義龍を含め他敵対しうる勢力は一掃せねば真に美濃を収めたたは言えぬと思っておる」
「誠にその通りにございます」
光秀は膝横に拳を突き立て
頭を垂れ同意の意を示した
「そこでだ。まず1つ目お主に問いたい事がある」
「ハッ!なんなりと」
僕は1つ目にして、今回の密談の最重要質問をする
「斎藤義龍を討伐するとして、斎藤道三は敵になりうると思うか?」
「……なりえません。と、言いたい所ですが。私には図りかねます」
大丈夫…かな?
この質問はかなり危ない質問であったかなっと自分でもわかっている
もしも、斎藤道三の真意が偽りであり、光秀を密偵として送っており寝首をかこうとしているのであれば
この質問はかなりグレーな所だろう
仲間意識が無いと思われ敵対されても可笑しくはない
だがしかし、道三との会談と光秀の態度。加えて未来の知識から大丈夫だろうっと
そして、リスクを犯してでも聞いておくべき事だと判断したから聞いた
そして、質問は続く
「光秀よ。お主の客観的な部分はわかった
ではお主の主観ではどうだ?道三殿の小姓として隣にいて道三殿は討伐を申し出た時どう答えると思う」
「道三様は身内であれ厳しいお方です。そして義龍様は粛清を加えるに至る程度には道三様と敵対していらっしゃいます」
ふむ。なんとなく斎藤道三のイメージとしてはあってるな
「必要とあらば、息子の首であろうと切り落とす覚悟は持っておられるお方であると私は確信しております」
「うむ」
「しかし、今の現状。義龍様…いえ、斎藤義龍殿はなおご存命の上道三様に楯突いている状況。今程の力を得る前に義龍を叩いておけば万が一にも負ける可能性が無かったのもこれまた事実」
なるほどな…まぁそうだわな
常にわかりやすく対立し続けた息子に対して気付かぬ親がどこにいると言う感じではあるし
叩こうと思えば叩けたわけではあるよな。実際に信長はそうしてきているわけだし
「なので、私には図りかねるという答えだったわけです」
まぁ納得はできる。そして?
「私個人の見解と致しましては、道三様は覚悟を決めておられると思われます」
つまり、YESか…
「もちろん。私の勝手な見解ではあります。しかし、道三様が義龍殿を討たない理由も想像がつきます」
「跡継ぎ問題か?」
「は、はい。その通りにございます。流石は信長様です!」
「うむ。話を続けよ」
真剣な顔からの満面の笑顔の称賛に驚いたが
すぐに真面目な顔に戻り光秀は話の続きを語り出した
「ハッ。義龍殿は道三様いわく当主に足り得る実力を持ち合わせてはいないと言う見解は信長様もお聞きになられ、信長様もそう思われている筈です」
「うむ」
まぁ俺の場合は未来知識だけど
信長もそこまで斎藤義龍については調べきれていなかった様子
「美濃という地は、北に上杉、南に今川、西に武田、そして東に信長様と蹂躙して下さいと言わんばかりか、進行の為の足掛かり程度ではあるものの天下に近づく1歩となり得る地であると道三様と信長様の共通認識であられる事でしょう」
道三がもう30才、いや20才若ければ織田家が食われててもおかしくなかったかもしれないんだもんなー
「しかし、片田舎の当主であれば問題ないものの修羅とも言えるこの地を収めるだけの実力は義龍殿には無いとのお考えです」
まぁ確かに
実際に武田軍が攻めてくるわけだし
今の散り散りの斉藤家など
日ノ本きっての騎馬隊には手も足を出ないだろうな
「なので、早々に義龍殿には見切りをつけ他の嫡男の方々を育て始められましたが中々上手く行かずじまい。そして、余談ではありますが隣国尾張にてうつけと呼ばれる信長様に光るものを見て将来信長様が織田家をもしも継がれる事があれば軍門に下ろうと思われていたそうです」
そうだったのか…
信長の記憶にも道三との短いやりとりが鮮明に記憶に残っている
それ程までに、お互いに記憶に残るって凄い事ではあるよな
「道三様は昔こう仰ってました。『儂の民や自国を荒らされ無様な死に様を晒す位なら親自ら慈悲をもって殺めるのもこれまた親の務めなりか』っと」
かっけぇぇぇー!
いや、不謹慎か…でも、未来が違って道三が義龍を返り討ちにしてたら名言として残っていたかもな
「道三様には覚悟あるのだと思います。しかし、私は受ける側でしたが親子の愛情というのも理解できます。道三様が義龍殿に慈悲をかけ殺めるのを躊躇っておいでになるのでしたら光秀には道三様がどう答えられるのかわかり兼ねる所です」
「であるか」
難しい所…か
これは道三への文の内容をもっと練らねばならないな
「うむ。中々に身になる話であった。大儀である」
「ハッ。ありがたき幸せ」
光秀は頭を垂れる
口元が何かピクピクしてるんだが…
もしかしてニヤけるの我慢してる?だったら超かわいい
「して、もう1つ言っておく事がある」
「はい、なんなりと!」
ガバッと少々勢いよく頭をあげ前髪が真中分けになった程の勢いであった光秀の顔は真剣そのものだった
「今の話を聞き考えるを改める必要があるが、我は斎藤義龍を討つつもりでおる」
「左様にございますか。して、私は何を!」
「…斎藤義龍を討つ理由とかは聞かなくても良いのか?」
「ハッ。信長様と道三様が相違なく決められた事でありましたら私に拒否する意義などありませぬ」
「で…あるか。だが、一応聞くがよい」
「ハッ!」
正直な所、予防線として聞いておいて貰わねば優吾にとって困るのだ
「独自に掴んだ情報だが、斎藤義龍は2月後あたりかと目をつけておるが近々道三殿に戦を仕向けるかのような動きをしておる」
「!?それは誠にございますか!!」
「うむ。確かな確証があるわけでないが備えるに越した事はあるまい」
情報ソースはもちろん。未来知識
今は現代で言うと2月7日だから、今から2ヶ月後。現代知識通りなら4月17日に斎藤道三は斎藤義龍に打ち倒される
救護に向かった信長は間に合わず敗走
信長自らが殿となり難を逃れたという。近々みんなで話し合いに出さねばならない事だが、この未来恐ろしい事この上ない
「早く道三様にお伝えしなければ!!」
「いや、我直々に文を送る。お主は動かなくてもよい。
まぁ道三殿の伝令として動くのであれば我は止めはせぬが」
「……気づいておられたのですか?」
「ほぅ。やはり、送っておるのか」
「……鎌をかけましたね?」
「勝手に喋ったのはお主であろう」
僕はニヤッとしてやったりという顔が自然とでる
「えー…違うんですよ!信長様の密偵とかではなく道三様に謀反の企みがあるわけではないなです!」
この反応は素…かな?
なら、選ぶ言葉はこれだ
「気にするでない。道三殿が謀反を企てるとは今は思っておらん」
「さ、左様にございますか」
「うむ。今日の密談の事も文に書き記しても構わん。我の文の真実味が湧きむしろ好都合である」
「ハッ。かりこまりました」
「フッ」
僕は何だか可笑しくて吹いてしまった
「フフッ」
光秀も釣られて笑ったようだ
「し、失礼しました」
光秀は即座に謝った
「いや、気にするな。場を弁える必要はあるが笑いたい時は笑えば良い。感情を押し殺す必要などない」
光秀は目をまん丸とし
満面の笑顔を浮かべ
今までで1番元気な「ハッ!かしこまりました」っと言い頭を垂れた
「して、少し話を戻すがの」
「ハッ!」
「2月後までに迎えるであろう合戦の副官をお主にやってもらいたい」
僕は独断ではあるが、剛輝に光秀を任せるという事を決めた
事後報告にはなってしまうが、事の運び次第ではこの密会の事を隠し通すのもいいかもしれないと思っている
絶対に真綾と由紀、後もしかしたら太一にも怒られるしね…
「ハッ!必ずや良き一報をご報告いたします」
「うむ。期待しておる」
「して、侍大将はどなたが?」
まぁ当然の質問だよな
「うむ。今、足軽大将をしておる木下藤吉郎にしようとおもっておる」
「ご挨拶した時に一緒にいらしたお方ですね」
「うむ。奴は数少ない信用に足る人物である。武勲次第では正式に侍大将にしようと思う」
「かしこまりました。信長様が目をつけられるのでしたら確かな才をお持ちなのでしょうね」
「…うむ」
どうだろ…
木下藤吉郎であるのに間違いないが、剛輝だからな…
現代の友達に戦の指揮ができるのか。それはわからない
だが、前線に赴かせてこのまま足軽にしておくのは危極まりない
ならば、指揮官にした方がマシだし、歴史に忠実でもある
「しかし、藤吉郎はまだ侍大将として軍を動かした事はない
なので、光秀お主に藤吉郎の手助けをしてもらいたいと考えておる」
「ハッ!信長様のご期待に答えられる様尽力いたします」
「うむ。期待しておる」
「ハッ!」
気合いの入った返事をして貰えた事で予防線は貼っておく
「この事は決まった事ではない。我の頭で作り上げたものである
変更点や戦を回避するという事にもなるかもしれぬ。
それゆえこの事は内密にな。誰にも話すでないぞ」
余計な不安を与える必要はないし
こう言っておけば、光秀に「やっぱあの話無しね」とも言える
そして、何よりこの密談が自分の意思と関係なく仲間達にバレる事もないだろう
「わ、私と信長様だけの内密ですか?」
「?うむ、そうである」
「この秘密絶対に破りませぬ!」
「う…うむ。そうでなくては困る」
口…は硬いよな?
てか、普通に漏らされたら信用度が下がるぞ?
「では、話は終わりである」
僕は立ち上がる
「ハッ!」
光秀は頭を垂れる
そんな光秀に
「あーそうであった。部屋であるがこの部屋を使うがよい」
僕はギリギリの所で部屋を変えるという話を思い出した
「こ、このような広いお部屋を頂いてよろしいのですか?」
広いかな?
まぁ確かに剛輝以外の仲間達と同じ位の重臣クラスの部屋ではあるか
……まぁいいだろう
どうせ、隣で士官させるなら広い部屋にする必要があるし
道三からの使いという事はお客様でもある。問題なかろう
「構わぬ。今日はもうすぐ夕刻である事だし布団のみ女中に運ばせよ。その他必要なものだけこの部屋にもってきて明日女中と共にこの部屋に移住せよ」
「ハッ!かしこまりました」
「うむ。では我は休むとする」
「おやすみなさいませ」
僕は光秀の頭を尻目に扉を閉めた
よし。
これで、今日のやる事は終わりかなー
やる事はあるか…
でも、明日でいいか…流石に疲れた
信長の睡眠時間は少なかったていうし、実際短かったみたいだけど
そこはとてもマネできそうにない




