初めての朝
僕は事のいきさつを説明した
もちろん。適当に具合が悪くて吐いたとだけしかまつには伝えていない
「なるほど。かしこまりました」
ペコリと頭を下げるまつ
「....」
何も言わない太一
確かに言葉足らずだった
いきなり布団を洗ってくれは流石になかった
「では、私は、準備をして、作業に取り掛かります」
そう、言うとまつは、そそくさと行動を開始した
そして、この場には僕と太一の2人きりになった
そこで、太一には本当の事を話す
僕が信長の過去に直面して無残にも嘔吐した事を
そんな僕に太一は
「大丈夫かい?顔色がすぐれないようだけど」
「正直大丈夫ではないな。だが、急を要するごどでもない」
「そっか...」
何やら重い空気が流れる
「...ごめん優吾」
当然謝る太一
理由は大体察しが付く
「太一が気にすることじゃないよ」
「でも..僕だって」
「大丈夫だ太一。これは僕が向き合う問題だ」
「....」
前田利家は信長を後ろから支えてきた信用できる仲間であった
太一も優吾といっしょに苦楽を共にしてきた
だが、過去トップクラスで追い詰められている優吾にいち早く気付いてやれなかったなどと思っているのだろう
「太一。僕は大丈夫だ」
「そう」
「ああ。だから、太一が気に病むことじゃない」
「...僕はあるていど信長の過去は知っている」
「そうだろうな」
「この記憶は、場合によっては病むレベルだ」
「否定はできない」
「だから!追い詰められた時は!絶対に僕たちをたよってくれ!!」
少々驚いた。こういう時に声を荒げるのは珍しい
それだけ太一は気づかなかった自分を責め、悔いているのだろう
そこまで、気にする必要はないのに
「ああ。約束する」
「絶対だよ?」
「ああ」
太一は安堵の溜息をこぼす
「でさ、さっきも言ったようにこのことは内緒にしておいてくれよ」
「それなんだけど」
さきほどまつさんにも伝えたが
先ほどは上の空だった太一の念を押す意味でもう一度言うと反論が返ってきた
「由紀ちゃんには..言うべきだと思うんだ」
「どうして?」
「僕と同じで由紀ちゃんも信長の過去を知っているからさ」
由紀は丹羽長秀の代行として来ているのだから、僕の過去は確かに知っている
だが、わざわざ言う必要もないんじゃないだろうか
「由紀ちゃんは、結構責任感が強い。だから、もし後で優吾が気に病んでいた事を知れば傷つくと思うんだ」
「だけど..」
「僕がもし、この事を後で知ったら自分を責めるように由紀ちゃんも同じかそれ以上に気に病むはずだ」
「...そうかもな」
あまり考える事を避けていた事もあり、そこまで思い当たらかったが
もし僕が、太一や由紀の立場で信長の過去を後から聞いたとしたら..
まぁそうかもしれないか
「うん。明日由紀にも..後事情を知らないが剛輝にも軽く説明しようか」
「そうだね。あまり詳しく話すと混乱を招くだけだし、剛輝まで元気なくしたらそれはそれでマズイからね」
「だな」
僕たちのサークルのムードメーカーである剛輝まで意気消沈した場合
作戦の成功に関わってくる
それは絶対に避けたい
「じゃあ2人にはどこまで伝えるか太一の判断で伝えてくれ」
「いいのかい?」
「ああ、僕が言うと必要以上にセーブしてしまいそうだし、何より今は僕の記憶なんだ。自分で話すのは悲劇のヒロインみたいで気が引ける」
「わかった。明日2人には話すよ」
「お願い。僕はもう戻るよ。今日は寝られそうにないし代わりの布団はもういいから。」
これで伝える事はないだろう
「おやすみ太一。まつさんによろしく」
僕は自分の部屋がある方角を向く
「待って優吾。そのまま聞いてほしい返事はいらない」
言うとおりにする優吾
「ごめんね。優吾」
一度言葉を区切り「信長と違って優吾には僕らがいる安心して」
まったく太一は...
謝るのは余計だったけど
正直その後の言葉かなり元気が出る
口が自然に吊り上がる
(ありがとう太一)
僕は言われた通り無言で自室へと歩き出した
優吾は自室に戻り作戦の内容を考えたり、紙に作戦内容をせいしょしたり
色々な事をしていると朝日が昇り
戦国の世にきてから初めての日の日の出をしっかり目に焼き付けた
信長の朝は早かったようで日の出からまもなくするとお市が部屋にやってきた
「お兄様もうおきていらしゃったのですか」
「おはよう市」
昨日長い間喋ったおかげかどもることは無い
気を抜くとダメだが
「朝ごはんの準備ができていますがどうなさいますか?」
「ああ、いただこう」
「かしこまりました」
「あ、市今日はいつも軍議を開く場所で食べたい」
夜中から換気はしているが自分ではわからない臭いがしている恐れがある
それに...
「食事をした作戦関係者を集め作戦の最終確認もおこないたい」
太一と由紀以外にも家臣はいる
作戦の内容を今更変更することは無いが
一応他の家臣の言い分をあらかじめ聞いておいた方が、めんどうがないだろう
それに殿。直々に足軽やその他の物へ直接命令を下した方が指揮が高くなるのではと言う考えだ
「かしこまりました」
そういうとお辞儀をし、踵を返した
一度背伸びをして
「さて気を引き締めていこう」
優吾は歩き始めた
目の前に朝ごはんが置かれる
「さぁお兄様。毒見はすんでおります。お召し上がりください」
「ああ」
優吾の戦国初めてとなる朝食は
玄米 具なしの味噌汁 めざし3匹 南瓜の天ぷら2枚
だった
これはあ豪華なのだろうか...いや、普通か
信長の記憶によると他の武家は知らないが大体信長の朝食はこんなん、なんだそうだ
「では、いただこう」
まず、玄米を口に入れる
まず、マズイ
いや、この時代からすれば普通なのだろう。現に食にうるさい信長も玄米に文句を言ったことがない
だが、優吾は現代の米も知っているためか比べると確実に見劣りすると感じざる得ない
昨夜も玄米は食べたが、味を感じる余裕など昨日の優吾にはなかった
夢で信長の記憶を垣間見て、自分で思い出すことで開き直れたみたいだ
まぁ割り切れたわけは無いから、正直まだ寝るのは怖いが
(あ、早く食べないと、家臣が集まり始めるか)
まぁ身分が殿なのだから。とろとろ食べていても問題はないのだろうが
目の前かその外で食事を待たれるとと言うのは気になる
玄米を口いっぱいに入れ味噌汁で流し込もうとする
(お?)
味噌汁は結構普通だな
濃いとも取れるかも知れないが、優吾は好みだった
天ぷらとめざしも口に放り込んでいく
どちらも塩で味付けされており現代とそう変わらない
天ぷらはサクサクで南瓜は柔らかく口の中に入れると口いっぱいに甘さが広がる
めざしにも何の不満もなく、おいしく食べられた
全体的にあっさりしていて朝食としては100点を上げたいのだが
(米がな...)
これですべてが台無しだ
これを好む人は現代の日本にもいるかも知れないが
僕はダメだ。正直土から生えている米をむしって食べている様な感覚
食べたことないけど
米は今後改善していきたい
無暗に歴史を変えてもいいのかとも思うが
これは、死活問題だ
腹が減っては戦は出来ぬとも言うからな
ごはんを食べ終えゆっくりしていると
足音が近づいてくる
「失礼します」
お市がふすまを開け僕の様子をうかがう
「食器はもう下げてもよろしいでしょうか」
「ああ」
「かしこまりました。それとそろそろ家臣の方々がお見えになります」
「わかった」
そんな会話があってすぐ足音が近づいてきた
「信長様!失礼いたします」
「来たか、入れ」
「ハッ」
入ってきたのは家臣の一人である佐久間信盛であった
記憶にはあったけど普通のおっさんって感じだな
髭だるまとでも言うか、あまりパッとしない
これでも信長を支えてきた、家臣ではあるが
あ、そういえば信盛って追放されるんじゃなかったっけ
確か役にたたないからとかで
という事は僕もいつか追放した方がいいのか?
うん。それが無難な方法かもしれない
そんな失礼なことを考えていると
「長秀殿から聞きましたぞ!こたび作戦妙案にございます」
「そうであろう」
「ええ、この作戦であれば、信勝もさぞ恐怖に慄くことでありましょう」
「ああ、信盛よ。長秀と利家には各自現場監督を任せてある」
「はい」
「お前には、全体の現場監督として、作業を滞りなく進んでいるか我に報告してほしい。基本は2人に任せておいて構わん」
「ハッ!かしこまりました」
要約すれば、お前は口を挟まず、何か起これば私の所へ伝言しろと言う命令だが
言い方を変えればそれなりに聞こえが良くなっただろう
流石に、同じ家臣であっても最年長(43歳)をないがしろにするわけには行かない
だが、サークルの仲間の方が俄然信用できる。だから、こういう位置づけにした次第である
「身命を賭して、命令を遂行したいと思います」
「ああ、期待している」
これで信盛の対処も終わったなと思った所でナイスなタイミングで複数の足音
「全員そろったな」
その中にはもちろん由紀と太一と剛輝もいる
「では、これより作戦の最終確認を始める」
「「「「「ハッ」」」」
朝から、綺麗にハモった声が部屋中に響き渡った
はい。どうだったでしょう
今回の話の様なごはんの話なんかは今後もしたいですね
やっぱり現代とこの時代の大きな違いの一つは食事の面ですよね
なので今回のを伏線にご飯に関する話を今後たまに入れたいと思います。
ぜひお付き合いください
では、最後にここまで呼んで下さった方ありがとうございました
ではこれにて