1-1 仲間たち- Freunde-
「ディートリッヒ・フォン・フリードリヒ大佐、ただいま到着しました」
ディートリッヒはデスクに座る総統の前で敬礼をする
「ご苦労、休んでくれ。よく来てくれたね。それで訓練のほうはどうだね?」
総統に言われ休む体制に入る
「はっ、とりあえず実戦で使える程度にまでは」
最初は特殊な操作であったためてこずることもあったがクルーたちのほとんどがかなりの練度を誇っていたため順調に訓練は進んでいた
「よろしい、ならば君たちに初めての任務を言い渡そう」
総統はデスクに肘を立て手を組む
「我がコロニーの最新鋭戦艦ビスマルクを知っているな?」
モニターに巨大な戦艦が映し出される
「はい」
戦艦ビスマルク。既存の戦艦を凌駕した性能を誇ると言われるものでZ-1と同時期に建造された
新型メタルナイト、フォッケウルフを数多く格納でき主砲である47口径プラズマ収束砲は憎き人類の敵、アルディアに大打撃が与えられると期待されている
「今月末にアメリカ主催で観艦式が行われる。君たちZ-1のクルーたちにはビスマルクをアメリカまで護衛してもらいたい」
「なるほど、今回も日本コロニーは欠席でしょうか?」
音信不通である日本コロニーを思い出し総統に尋ねる
「さぁな、どうせ日本コロニーは欠席だろう。彼らは変なところが臆病だからな」
総統は皮肉っぽく笑う
「日本の戦力がわからない以上襲撃の可能性もあるのではないのでしょうか」
ディートリッヒの疑問に総統は眉間に皺を寄せる
「その可能性はないとは言い切れない。これだけ動きが怪しければ隠し玉で奇襲を仕掛けるだろう。しかしもしそうなれば立派な国際問題に発展する。アルディア相手で精一杯な上に世界中のコロニーが寄ってたかって殴りかかればひとたまりもないだろう。まぁそれはさておきクルーたちに一週間の休暇を与えてくれたまえ」
「なるほど、わかりました。今更なのですが総統、どうして私のようなよく呼びつけるのでしょうか?」
素朴ではあるがかなり重要なことだ。一国の代表がわざわざ佐官であるディートリッヒのために時間を空ける。普通ではあり得ない待遇なのだ
「ああ、それはだな。私は君のファンだからなのだよ」
「はぁ」
「私がまだ総統となって間もないころのフォルクス宙域戦で君が率いていたヴィッテルスバッハ級戦艦、ツェーリンゲンの活躍に心を奪われてね。叙勲式のときは興奮したものだ」
総統がうっとりした顔をするのを見るとディートリッヒは総統に対する見方を変える必要があるなとひそかに心に誓った
「私はその、あのときは無礼を働き申し訳ありませんでした」
ディートリッヒは申し訳なく頭を下げた
「仕方がないさ、友軍艦を爆弾にし生き残ったのは君一人。悲しむのは当たり前だ、だが多くの仲間たちから貰い受けた命を無駄には散らすなよ」
総統はディートリッヒへと歩み寄り優しく肩に手を乗せる
「さて、私は視察があるので失礼するよ」
「お気をつけて」
ディートリッヒは敬礼をして廊下を出る総統を見送ると不意に総統が足を止める
「ディートリッヒ大佐」
「はい、なんでしょうか」
「英雄の顔が戻って来たな」
「さてZ-1クルーの諸君。ついに初任務のときが来た」
ディートリッヒはメインルームでクルーたちを前にして任務の内容を伝える
「我々は最新鋭戦艦ビスマルク級ネームシップ、ビスマルクをアメリカコロニーまで護衛することとなった。アルディアとの交戦も予測される、出発は一週間後だ。それまで各員一週間の休暇を与える。以上だ」
そう言ってZ-1クルーたちは解散した
「おいディートリッヒ、一杯付き合えよ」
オットーがディートリッヒの背中を叩き飲みに誘う
「ああ、いいだろう」
ディートリッヒは快く誘いを受ける。久しぶりの友人との杯を交わすのを心待ちにする
「あの艦長、それとオットー中佐。自分も参加してもいいでしょうか?」
ゲオルグが控えめに聞く
「おうおう気にするな!お前さんも俺たちの酒に付き合えよ」
「艦長は?」
「私は構わんよ」
ディートリッヒは気にする素振りも見せずにゲオルグを受け入れる
「ありがとうございます!」
ゲオルグはディートリッヒとオットーに敬礼をするとイヤッホゥ!と飛び跳ねながら走って行った
「まったく、ゲオルグ軍曹はどこで飲むかしっているのか」
ディートリッヒは困ったような顔をするとシガーケースから葉巻を取り出し火をつける
「知らないんじゃねぇの。まったく、有名人は辛いねぇ」
オットーがディートリッヒに葉巻を要求するとディートリッヒは少し渋い顔をしながらもオットーに手渡す
オットーは葉巻に火をつけ控えめに肺に煙を流し込むと綺麗な丸の形に吐き出す
「ほぅ、キューバか。結構いいのを吸っているんじゃないか?」
オットーは葉巻を摘まむと興味深く眺める
「まぁな、電子タバコじゃ満足できんしこの年では健康もなにも考えるだけムダだと悟ったのさ」
ディートリッヒはそう言うと紫煙を吐き出し灰を落とす
「それは言えるな。この年まで軍人をやると余計に健康とかどうでも良くなっちまう。長生きするだけ死ぬ確も増えるしな」
オットーは豪快に笑う
「違いない、ところでオットーはいつになったらその幸運を使い果たすんだ?」
「さぁな、幸運なのか悪運なのか。そういうお前さんだっていい加減幸運の女神に愛想を尽かされた頃合いじゃねぇのか?」
二人はゆっくりとバーへと向かう
ディートリッヒは士官学校時代を思い出し少し若返れた気分になった
「私は猪突猛進な君と違って引き際を弁えているのだよ。これは運任せではなく私の実力だ」
「カッー!またメタルナイトの模擬戦で話をつけてやりたいぜ!」
オットーは悔しそうに拳を握り地団駄を踏む
若い女性士官が悔しがるオットーの姿を見て笑う
「オットー、20年前私との模擬戦のときの戦歴忘れたのかね?」
「あぁ?60戦25勝25敗10引き分けだろ?あの頃はお前さんにだけは負けたくなかったよ。正直艦長よりもメタルナイト乗りのほうが向いているんじゃないかと思っていたさ、今でも思ってるけどな」
オットーは短くなった葉巻を道端に捨てると靴で踏む
「私もたまに乗るんだが自分でもそう思うときがある」
ディートリッヒは携帯灰皿を取り出し吸い殻を入れる
「ほぅ、まだやってたのか」
「愚問だな、いつ自分がメタルナイトで戦うかわからないからな」
「それでフォッケウルフの使い心地はどうだった?」
オットーは興味津々にディートリッヒに使い心地を聞く
「そうだな、操縦がある程度オートメーションされたのはいいが少し無理を聞いてくれないと言ったところか。その点アルバトロスD.Ⅲのほうがマニュアルではあるが使い勝手はいいな」
ディートリッヒの発言にオットーは驚きを隠せずおいおいおいと呆れる
「アルバトロスとかオレたちが士官学校生時代には型落ちしていた3世代型じゃねぇか」
オットーはドン引きする
「いやぁその、確かに3世代型は動作的な意味で完成形だったけどよ。操縦が一番難しいヤツじゃねぇか」
「そういえばお前訓練のときアルバトロスですっ転んで当たりどころ悪くて中破させて教官にこっぴどく怒られてたな」
オットーは顔を真っ赤にするともうやめてくれと哀願する
「そいつはすまなかった」
ディートリッヒは鼻で笑った
「でもあの頃は俺もお前もマリアにだけは勝てなかったな」
「そうだな」
ディートリッヒは作られた空を見上げ消え入りそうな声で生返事をした
オットーの携帯端末が着信の知らせを鳴らす
オットーはポケットから携帯端末を取り出し耳をつけた
「おう、ゲオルグか。やっぱり迷ってたか。ああそうだ、そこから3ブロック北へ行け。待っててやるから。じゃあまたな」
オットーは通話を終える
「ゲオルグをここで待つか」
オットーはため息をつき待つことを提案する
「それもそうだな」
ディートリッヒも同意すると壁に寄りかかった
「そういえばディートリッヒ」
「なんだオットー」
「散々復帰を嫌がっていたお前がどうしてZ-1の艦長を引き受けたんだ?」
オットーの言葉にディートリッヒは答えるべきか悩んだ
妻を生き返らせる。そんな荒唐無稽な理由でなったとは言いづらい
「ただの気まぐれさ」
ディートリッヒは適当に誤魔化しやり過ごす
「ただの気まぐれ、ねぇ」
オットーは少し含みをいれた口調で言う
「まぁいいさ、どんな理由であれ俺はお前が帰ってきてくれて嬉しいよ」
オットーはそれだけ言うと黙った
「お待たせしてすみません!」
ゲオルグが息を切らせながらもディートリッヒたちと合流した
「お勤めご苦労さんだぜまったく」
オットーは愉快そうにゲオルグを労う
「さて入ろうか」
ディートリッヒがバーのドアを開ける
バーのマスターと目があった
マスターは一瞬ギクっと体を跳ねあげるがすぐに平静を取り戻しグラスを拭く
「いらっしゃいませ」
「おうマスター、ビール出してくれ!」
オットーは注文しながら席につく
「では私はウォッカを」
ディートリッヒはマスターにウォッカを要求すると帽子を脱ぎハンカチで汗を拭う
「水をくれ」
ゲオルグが水を注文する
「おいおいゲオルグ、ここは飲み屋だ。水なんてシケたもんじゃなくて酒頼めよ酒」
オットーがマスターにビールを要求するとディートリッヒは呆れたように首を振る
「まったく、少しは手加減しろよ」
オットーを注意すると出されたグラスを口へ運ぶ
アルコールの焼け付くような感覚が体内を駆け巡るのを感じる
「んでよ、ゲオルグって確か元々陸軍だよな?なんで海軍に?」
オットーはそう言ってビールを飲み干し追加を頼む
「陸軍って基本暇じゃないですか。だから少しでも仕事がある海軍に転属したんです」
「なるほどな、だが軍人が暇をしているということは平和であることを意味する。私としては自ら戦地へ赴くのはあまり感心しないな」
「別にいいじゃねぇか。人間グータラしてると腐っちまうもんだぜ」
ディートリッヒはオットーの発言に対し不快そうにため息を吐くとウォッカを飲み干した
「まったく、すっかり出来上がっているな」
ゲオルグとディートリッヒはオットーの肩を担ぎ基地まで運ぶ
「オットー中佐って酒が弱いんですかねぇ」
ゲオルグは困ったようにディートリッヒに聞く
「ああ、昔から酒が弱いくせに飲もうとするんだ。厄介だよ、こいつは」
ディートリッヒが諦めたように愚痴を零すとゲオルグは渇いた笑い声を上げる
「オットー中佐とはどういったご関係で?」
「なに、ただの幼い頃からの腐れ縁さ」
「うおおおお!おいディートリッヒ、てめぇ今なんつった!?」
オットーが突然暴れ出す
「ゲオルグ軍曹、取り押さえるぞ」
「はっ!」
ゲオルグは暴れるオットーの足を崩すと的確に組みつく
「さすが陸軍出身だな」
ディートリッヒが感心するとゲオルグは調子にのってオットーを締め上げる
「がぁああああ!!」
「軍曹!」
オットーの悲鳴のディートリッヒは慌ててゲオルグを止める
「しまった!」
ゲオルグがパッと手を離すとオットーは地面に伸びた
次の日である
ディートリッヒは暇つぶしに散歩をしていた。今まで酒に溺れて時間を湯水の如く浪費をしていたがいざ忙しくなり休暇を与えられるといざなにをすべきか思い浮かばなかった
さてなにかめぼしいものがあるかどうかと大通りに並ぶ店を見ながら歩く
「あら、艦長」
凛とした女性がディートリッヒを呼ぶ。ディートリッヒは声が聞こえる方向を向く
「ヘンリエッタ伍長じゃあないか」
ディートリッヒは軽く右手を上げて挨拶をする
「艦長もお買い物に?」
ヘンリエッタはパンや果物が入った紙袋を抱え腕には雑貨が入った袋を下げている
「私の場合家に閉じこもっているのも退屈で外に出たのはいいがどうすべきかと悩んでいたところだ」
「そうでしたか。私も家にいて退屈だったので買い物を」
「なるほど、もし良ければだが荷物持ちを引き受けさせていただけないだろうか?」
ディートリッヒの申し出にヘンリエッタはくすりと笑う
ディートリッヒは初めて見たヘンリエッタの笑顔に少し見とれてしまった
「まさか艦長が私を口説くだなんて思ってもみませんでした」
ヘンリエッタの言葉にディートリッヒは罰悪そうに頭をかくとヘンリエッタは持っている紙袋をディートリッヒへ差し出した
「お言葉に甘えていただきます。艦長」
その紙袋を了解したと言って受け取る
「さて、どこへ行こうか」
ディートリッヒは両手に荷物を抱えながら身軽な足取りで歩くヘンリエッタを追いかける
「そうですね、この近くに美味しい紅茶の葉が売っているところを知りませんか」
なるほど紅茶かとディートリッヒはうなづく
「ならばここを右に曲がって2ブロック先にいい店があるからそこへ行こうか」
「はい」
「そういえば君はかの有名なグーテンベルク家の一人娘だったね」
ディートリッヒが思い出したように言うとヘンリエッタが少し驚いた顔になる
「そうですがまさか今まで知らなかったとか?」
「ああ、あまりそういうのは興味がなくてね。その様子だとグーテンベルク邸にはいないようだが」
「ええ、私にとってあの家は窮屈でした。だから外に出て自由に生きると決めたんです」
ディートリッヒはヘンリエッタの強い意志を読み取ると深く頷く
「だが君はどうして軍人になったんだ?もっと自由な生き方ができたはずだが」
「自由だから、ですよ。確かに私の父に祖父、曽祖父までグーテンベルク家は代々軍人の家系です。でも私は己の意志で軍人を志したつもりです。誰かに強制されたのではなくただ私の力がどれだけ役に立てるのか。それだけを証明したくて」
「なるほどな、私も昔君と同じように自分の可能性を証明したくてオットーと軍人を志したものさ」
ディートリッヒは感傷に浸る思いで言う
「ヘンリエッタ伍長、ともにZ-1の仲間として己の可能性を祖国に証明してやろうではないか。グーテンベルクとしてではなくヘンリエッタ伍長として」
「はい」
そう言ってる間にディートリッヒとヘンリエッタは目的の店を通り過ぎてしまったことに気づいた
「すまない、少し歩きすぎたようだ。引き返そう」
ディートリッヒはしまったと言わんばかりに顔を伏せヘンリエッタに謝る
「まったく、これだからその歳でも奥様ができないのですよ」
ヘンリエッタは呆れ気味にディートリッヒを指摘する
「これでも私は既婚者なんだが」
「え」
3日目
「おいディートリッヒ、ちょっと付き合えよ」
オットーはディートリッヒの部屋でソファーにふんぞり返りながらディートリッヒにメタルナイトのキーを投げた
「いきなりなんだオットー?メタルナイトのキーなんて渡して」
大体察しはついているがあえてオットーに聞く
「決まってるだろうが、模擬戦やるんだよ模擬戦」
オットーは年齢を感じさせない無邪気な子供のような顔をする
「大体予想はついていたが果たして伝説のメタルナイト乗り様のお相手が務まるかどうか」
ディートリッヒが少し皮肉っぽく言うとオットーはガハハハと豪快に笑い膝をポンと叩いた
「オレは伝説から二番目のパイロットさ」
「妻に勝てるわけがないものな。だがあえて言わせてもらう、お前は伝説から三番目のパイロットであると」
ディートリッヒは机の引き出しから手袋を取り出すと立ち上がりオットーの目の前に投げた
オットーは待ってましたと言わんばかりににそれを拾う
「決闘成立、だな」
「さて今度こそお前に勝つぞオットー。負けたらポーカーでのツケを清算してもらうからな」
ディートリッヒは強気な口調で言う
「けっ!望むところだ。また最近ちょっと乗り始めたからといって俺の練度の前では無力だってことを証明してやるよ」
「それで、なんで僕が審判を?」
ヨハンは二人の老兵を前にし愚痴をこぼす
「悪いなヨハン曹長。Z-1のクルーの中で予定が空いていたのが君だったからついな」
ディートリッヒは申し訳なさそうに言いながらメタルナイトのシステムを起動させる
「アルバトロスD.Ⅲか。だいぶ古びてしまっているが手入れは行き届いているな」
アルバトロスのモニターを軽く撫でると操縦桿を握り動作を確認する
『どうだディートリッヒ、アルバトロスの具合は』
オットーから通信が入る
「上々だ、一体誰がこいつの整備をしたんだ?手の入れ具合に愛を感じるよ」
『そりゃおやっさんだな』
「おやっさん?」
『そうだ、Z-1の機関長アドルフだ』
ディートリッヒはほほうと嬉しそうに言う
「あとでアドルフ機関長に礼をしなければ」
『だったらアルバトロスに傷一つつけるなよ。おやっさん結構職人気質だからな。アルバトロスを開発したのもおやっさんらしいぜ』
「まさかアルバトロスの開発者だったとは。ますます興味深い」
「あのー、始めていいですか?」
ヨハンがおどおどした様子で二つのメタルナイトを見る
ディートリッヒのアルバトロスとオットーのフォッケウルフがゆっくり前進しにらみ合う
「ヨハン曹長、いつでもいいぞ」
「こっちもOKだ!」
ディートリッヒとオットーから準備完了の合図を受け取る
「では両者。始め!!」
ヨハンがそう言ってホイッスルを鳴らすとディートリッヒとオットーは長刀を抜きいきなり鍔迫り合いとなる
「まったく、いつになってもそうやって突っ込むところは変わらないなオットー!」
『そういうお前さんこそ言い回しがくどい癖に結局突っ込むのがお好きなようだな!!』
アルバトロスとフォッケウルフの長刀が火花を散らしぶつかり合う。両者一歩も譲らず実戦であれば確実に急所を持っていけるところを紙一重でかわす
「なにが練度の差だ、ブランクがあった私にここまでされるとはやはり伝説から三番目は確定だな!」
アルバトロスを素早く前へ滑り込ませ後ろから斬りかかる
『ぬかせ!お前こそブランクがあるとか言っておいて全然衰えてねぇじゃねぇか!』
「褒め言葉として受け取っておくよ」
フォッケウルフは一瞬バランスを崩すも自動的にバランスを取りすかさず長刀を横に振りアルバトロスの斬撃を防ぐ
『早く負けろよ!!』
「無理な相談だ!」
互いの長刀がぶつかり合い衝撃で吹き飛ぶ
「クソ!」
アルバトロスは拳を握ると格闘戦のポーズを構えた
フォッケウルフもアルバトロスと同様に格闘戦を仕掛ける
『やっぱ戦いの基本は拳ってな!』
「うわあああ!!艦長!?オットー中佐!?まずいですよ殴り合いは!!」
ヨハンが慌てて二人を止めるがディートリッヒとオットーは完全にエンジンがかかってしまいくんずほぐれつの殴り合いになっていた
「終わった....これ絶対終わったよ」
ヨハンが頭を抱えてしゃがみこむ
「ほぅ、なにが終わった」
ヨハンはその声を耳にし思考が停止した
「コラァ!!なにやってんだそこのバカたれどもは!!!」
アドルフがものすごい剣幕でディートリッヒとオットーを怒鳴りつける
あまりの恐ろしさに二人は動きを止める
その後ディートリッヒとオットーはアドルフに散々説教された後に整備の手伝いをさせられた
そしてディートリッヒはアドルフとアルバトロスのことについて語り合い硬い絆が結ばれたとか....
「これがZ-2 ゲオルク・ティーレか」
黒髪の少女が目の前の真紅の船体を満足そうに見上げる
年齢は10代後半、整った顔立ちはどこかヘンリエッタに似ている
肩には親衛隊の腕章がついている
「はい、Z-1のデータを元に改良しフレームの一部にはアルが使用されています。武装もZ-1 レーベリヒト・マースよりも量を増やしタキオン貯蔵量も増やすことに成功しました」
「パーフェクトだ、よくこの短期間で完成させた」
黒髪の少女はZ-2の装甲を優しく撫でる
「ありがとうございます。アリス・グーテンベルク様」
「総員、ビスマルク護衛任務予定日までに慣らしておけ!」
アリスが声を張り上げ船員たちに命令を下す
「グーテンベルク家には私がふさわしいということを思い知らせてあげるわ、ヘンリエッタ」