act1両者出揃う。
2006年夏。
私は、都内の総合病院から、東北地方にある、小さな病院に移動となった。
初出勤の日。
丸顔で小太りの婦長が医師と看護師の前で、私の紹介を始めた。
―こういう時は、自分で名前をいったりするのではないか?婦長は、私に喋る隙を与えないかの様に早口だ。
「それでは、先生に自己紹介の方をお願いします」
婦長が、何の前触れも無く、突然、話を振ってきた。
「えっと、神崎茉耶です。一応外科医です。宜しくお願いします。」
看護師は私より1周り程若い。医師は私より大分年上だ。
婦長がまた話を再開し始めた頃、廊下から、バタバタと騒がしい足音が聞こえた。
「婦長、これ遅刻か!?」
入ってきた男は、来るところを間違えたヤクザの様で、医師が着る白衣も恐ろしく似合っていない。
「御影先生、この空気で遅刻じゃないはずがないでしょう!?」 婦長は小さな目を大きくつり上げて御影と呼ばれた男を怒鳴りつけた。
「御影先生が遅刻なら僕も遅刻ですよね。」
御影の後ろからもう一人、真面目で気が弱そうな男が出てきた。
「佐野さん、分かってるならいちいち聞かないでくれる?」
婦長は今日機嫌が悪いのか…
私と同じ年代の人間が居ない。
私がそんなことを考えていると、何処からかカチカチとメールを打っている音が聞こえてきた。
「西河さん、今はメールをする時間ではありませんよ。」
西河と呼ばれた女は、看護師にしては、少し派手で、化粧も濃い。が、一方で、仕事が出来るというイメージも強い。
「それでは、これで朝のミーティングを終ります。」
婦長はそう言った後、御影と佐野、西河と私を呼び出した。
「御影先生と佐野さんは遅刻した罰、西河さんはメールをしていた罰として、神崎先生に病棟を案内して頂きます。」
―罰に使われるのも嫌なものだ―。
拙い文章ですが、読んでくださり、ありがとうございます。