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薔薇と少女

作者: 黒薔薇ノ姫

昔々、から始まったお話。

高い塔に住んでいる王女様と、街に住んでいる少年のお話。

小さな、小さな御伽噺。

昔々在る所に、小さい王国がありました。

その王国には高い塔に住んでいる王女様が居ました。

王女様は、長い真っ黒な髪と大きな漆黒の瞳を持っていました。

そして何よりも王女様を印象付けたのは、

漆黒の髪の毛に絡みつく銀色の薔薇(死の印)でした。

毎日、王女様は高い塔から地上を見下ろします。

地上では様々な人達が行き交います。

王女様は其れを見るのがとても好きでした。

村に住む少年は市に行く度に思いました。

「あの塔には誰が居るのだろう。」

だけど誰に聞いても大人達は答えてくれません。

仕方がないから村の同い年の子と推測をします。

「あの塔には魔物が封印されている」

「宝物がある」

「異次元への扉」

様々な推測が飛び交います。

しかし少年は、あの塔の中から美しい少女が、時折此方を見ているのを知っていました。

だから少年は他の子達の推測を信じませんでした。

「妄想でしょ」

色々な人に言われましたが少年はその意見を曲げませんでした。

「1度だけでもいいからあの子と話をしたい。いや、あの子を見つめられるだけでもいい。」

少年は気付いていました。


あの塔には裏口があることを。


「お友達が欲しい」

王女様は呟きました。

人の少ない塔の中でその言葉が飽和して反響しました。

綺麗な硝子作りの部屋は何も答えません。

「そう、1人でいいの。私を理解してくれる人…」

だけど、王女様はその塔から出られません。それに……。

其れだけが哀しくて、王女様は涙を流します。

外の世界では同い年位の子が楽しそうに話をしています。

羨ましい。

王女様は窓から顔を出しました。

すると1人の男の子と眼が合いました。

その男の子は王女様を見ると微笑みます。

「……ねぇ」

聞こえる筈も無いけど呟きます。

しかし男の子は王女様を見て口を動かしました。

「綺麗だね」

少年は思います。

「あの子は囚われているんだ」

そして言います。

「今、行くからね」

少女は其れを見て首を傾げました。

少年は微笑んでから裏口へ向かいます。

やっと、やっとあの子の声が聞ける……!!

少年は塔の階段を上ります。

長い階段は少年を拒むように立ちはだかりますが少年は其れを物ともしませんでした。


流石に疲れも見えてきた頃に扉が見えました。

扉には美しい硝子細工が施されています。

実は其処にはその国に伝わる古い言語で

銀の薔薇(死の印)

と記されていたのでした。

しかし少年はそんな事には気づきませんでした。

扉に手をかけ思い切り引きました。

かちゃり

部屋の真ん中に居た女の子は少年を見て言いました。

「ごめんなさい」

王女様は知っていました。

自分が、自分以外の人と出会うと消える事を。

「ありがとう、そしてさようなら」

少しづつ王女様の身体が硝子の様に透き通っていきます。

男の子は呆気に取られていました。

そして行き成り、消え行く王女様を抱き締めました。

王女様は完全に消える前に一度男の子を抱き返して呟きます。

「貴方に…私の…お友達に……成って欲し…か…った…」

そして王女様は消えました。

男の子は王女様の居た場所を見つめてそして1粒涙を流しました。


王女様は銀の薔薇を残し。

大きな塔には銀の薔薇が絡みついていました。

その国ではもう既に銀の薔薇は"死の印"では無くなっていたのでありました。


いつしか王国は「薔薇の国」と呼ばれる様に成っていました。

ありがとうございました。

王女様は幸せだったのでしょうか?

その答えは人其々だと思います。

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