15 プレゼン
今日は新年の初出社だ。須藤は少し早めに出社している。
町田駅を降りると玲子と鉢合わせになった。
玲子の瞳が優しくなる。
「北原さんおはようございます」
「須藤くんおはよう。・・・それにしても違和感凄いわね」
「社内ではこちらでお願い致します」
「あら、なんか残念ね」
「本当の俺を知ってるのはレイコだけで良いからな」
「そうね、私のリョータに変な虫が付くの困るわ」
玲子と社のエレベーターで別れた。
今日の朝礼は全事業者合同のWebだ。小柳取締役の挨拶から始まり岩崎社長の話がはじまった。
岩崎社長は小柳の妻の実父だ。小柳は結婚によりライバルを全員蹴落とし、今の地位を築いたと言われている。
新年の部内挨拶も終わり、明日のトップマネジメントレビューでのプレゼン資料の準備をする。
ほぼ完成しているので簡単に見直して終わりだが、一応会議室の大きなモニターに映して確認してみる。
大モニターを通して見るとまた改善すべき所が見つかる時がある。
会議室を出て事務所に戻ると経理課長の田中健一が明日のプレゼンの資料の見直しをしていた。
明日のプレゼンは俺と田中課長の2人だ。
タイの新工場立ち上げの機械とラインレイアウトを俺が、その費用と効果などを田中が担当する。
ただそのプレゼン資料だが・・・書式が古い。
35歳とは思えない昭和時代の書式でプレゼン用ではない。ただのデータ羅列資料だ。
必要なデータは全て網羅されているのだか、数字を見慣れた者以外には理解不能だ。
さて、どうやってこの膨大なデータを説明するのか・・・
こういうデータは裏で持っておく物で、言われたら出すのだ。表に羅列してはいけない。
◾️◾️◾️◾️
今日は朝からプレゼンの為、新宿本社ビルの大会議室に居る。
会議用パソコンを立ち上げ共有ネットワークから俺のフォルダーにアクセスし、今日のプレゼン資料をコピーしてデスクトップに貼り付ける。
動画が多いので念のため、ここのデスクトップに落としたのだ。
10時からトップマネジメントレビューがはじまった。
生産技術部の俺のプレゼンからだ。
まずラインイメージ動画を流す。その後はラインレイアウト図を出し、タクトタイム・標準作業手順とCT・ΣCT・MT・MCT・段替比率・理論人区と実配置人員・L T・VR比率を、フォトディレクターで編集した動画を駆使して、ラインの生産イメージを植え付けた。
標準作業の動画はライン立ち上げ時に、このままオペレーターへの教育資料として使ってもらう。
機械の説明と点検ポイント・メンテナンスポイントの動画も同様に、オペレーターとメンテナンス部門の教育資料にしてもらう。
点検ポイントはオペレーターへの日常点検シートの項目に入れている。
メンテナンスポイントは年間保全計画に落とし込み済みだ。
予備品に関しても重要度と購入リードタイムによりリスク分析して管理している。
管理用の棚も発注済みだ。基本的に指定席ロケーション管理だが、一部はフリーロケーション管理とした。
俺のプレゼンは分かりやすい、イメージし易いと大絶賛だった。
次の経理の田中課長の顔が青い。