14 ギフト
ハンバーガーも食べ終わり子供達はリビングでオモチャを広げている。
美香と俺はダイニングテーブルでお茶をしている。
「美香さんこれ」
俺は封筒を渡す。
美香は受け取り中を見て驚いた。
「このお金は!?」
「河本さんの退職金です。あの時ゴタゴタしていましてうやむやになっていました。大変申し訳ありません」
俺は深く頭を下げた。
あのゴタゴタで退職金が出ていなかったのだ。河本さんの勤続9年でうちの正規の退職金は290万だが、グリム・リーパーの件も含め700万渡した。
封筒を握り締め美香は泣いている。
「ありがとうございます。正直、日々の生活がキツくこのお金があれば助かります。怖いので考えないようにしていましたが、このままでは数年で生活に行き詰まっていたと思います」
「それと、仕事なんですが話して良いですか?」
「どうぞ」
「駅前に新しくオープン前のおにぎり屋さんがありますよね?」
「はい、果物屋さんだった所ですよね?」
「そうです。あそこの店ですが実は俺がオーナーなんです」
「えっ!そうなんですか!じゃあ会社辞めるんですか?確か王菱ですよね?それってもったい無いですよ?」
「ええ、もちろん辞めるつもりは無くて、別に従業員を雇ってやるつもりだったんですが、その人の親が急に亡くなってそっちの店を継ぐ事になってしまって・・・」
もちろん嘘だ。美香を雇う為の作り話だ。
「それはなんともタイミングが悪いですね・・・」
「それで美香さんを思い出しました。前におにぎり屋さんで働いていたと言っていましたよね?」
「はい、でも結構前ですよ?」
美香は東京のおにぎりの名店で働いていた経験がある。何度か食べた事があるが売り物レベルだった。必ず話題になると確信している。
「店長をお願いします」
美香に頭を下げる。
「・・・はい、よろしくお願いします。お店は私の夢なので結構嬉しいです」
「じゃあ将来はぜひこの店を買い取って下さい」
「わかりました、人気店になるように頑張ります!」 (どっちにしろこの店は将来は美香に渡すつもりだけどな)
「一応材料の仕入れ業者は決まっています。見てもらって気に入らなければチェンジして下さい。米は岩船産コシヒカリです。バイトの人数などもお任せします。言ってくれればすぐにタウン誌とネットの求人を出します。持ち帰り容器などのパッケージも出来ているので確認して下さい」
細々と説明するのを美香はボイスレコーダーに録音する。
最後にスマホにお互いの連絡先を交換する。
明日は店に行き実際に機材などを確認してもらう事にし帰宅する。
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翌日朝9時に店に集合し実際の店舗を見てもらった。使っている機材や厨房のレイアウトはなるべくバイトしていた店に近づけたが、効率が悪そうな所は改善した。
オープン予定は2月1日を目標に動いてもらう。