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13 ビリーブド・ファミリー

河本智・高橋孝・木崎修、3人の元従業員についてだが・・・


勤続27年の57歳だった高橋孝は天涯孤独だったので俺が引き取りうちの墓に入れた。

勤続3年目で25歳だった木崎修は両親は他界しており妹はいるが結婚して沖縄で暮らしている。妻は現在24歳で再婚しており、出産したばかりで幸せそうだ。墓は富士霊園に妻が買っていた。妻には弁護士を介し500万渡した。

興信所を使って調べた所、再婚相手の男は穏やかでなかなか真面目な男らしいので一安心だ。


河本智の家族だが、河本さん奥様の美香と共に施設出なのでお互い頼る親族が居ない。

小学生の男の子高校1年の女の子を抱えて、平日日中は近くの小さな工場にパートに出て、土日はスーパーのお惣菜コーナーで働いている。


ギリギリ状態だが真面目に懸命に頑張っている。河本さんも馬鹿正直で義理堅く、真面目な性格だったから似たもの夫婦だ。

なお東ノ精密は退職金・香典などは、ビタ1円も出さなかった事は調べてわかっている。


今日は1月の3日で世間では正月だ。河本美香は工場最後の日終えて帰るところだ。ここの工場は時代と共に業績が悪化し社長の年齢問題もあり、今日の創立記念日をもって63年の幕を閉じた。


河本美香は相模原大野駅前の商店街を歩いている。その顔はかなり暗い。美香は日々の心労・疲労からか実年齢の34歳より上に見える。


「河本さん!河本美香さん」

前から声をかけた。美香ははっと顔をあげた。

俺の顔を見てしばらく考えていたが思い出したらしい。

「高山社長の息子さん?良太さん?」

「そうです!お久しぶりです。でも今は母方の姓を名乗っていまして須藤になってます」

「美香さんは仕事帰りですか?」

「はい」

「何か浮かない顔してますね?どうかされました?」

「今日で働いてた工場が廃業して、明日から無職なんですよ・・」


「あぁ、それはちょうど良かった!美香さんに仕事を頼みたいんですよ!話しだけでも良いですか?」

「はいぜひ!でもあの・・・子供の夕飯もあるので、部屋でお話しを伺っても良いですか?」

「はい、前と同じ所ですか?」

河本の生前、たまに送って行ったり、何度か部屋にもお邪魔した事がある。

「はい」

「じゃあお土産と夕飯兼ねて、ちょっとそこのハンバーガーショップに寄りますね」

「えっ!そんな悪いです!」

美香は恐縮している。

食物アレルギーとかは無いそうなので、おもちゃ付きのセット4つと、ポテトBIG、照り焼きバーガー・フィッシュバーガー・BIGダブルハンバーガーなど大量に買った。


「ただいま!」

子供が駆け寄ってきたが、俺の姿を見ると立ち止まり警戒する目で見つめる。

「美優は良太お兄ちゃん覚えてない?」

美優と呼ばれた女の子はちょっと考えると、何かを思い出し笑顔になった。

「ピカチュウのぬいぐるみくれたお兄ちゃん?」

「そうだよ、よく覚えていたね!はいこれ今日のご飯はハンバーガーだよ!」

笑いながらハンバーガーの袋を2人に渡すと、大喜びし弟は変な踊りを踊りだした。

セットに付く話題になったチイウサのおもちゃをさっそく確認している。

「2人共おもちゃは食後にしなさい!」

「はぁーい」


2人はハンバーガーを袋から出し手際良く準備する。

真ん中で山になったポテトとハンバーガーを見て目をキラキラさせている。

自販機で買った炭酸ジュースも置いた。

めいめい好きなジュースをコップに入れる。


「なんかパーティーみたいだね!」

「お正月だからね!」

「そうだね!じゃいただきまぁーす!」

弟は何バーガーを食べようか迷っている。

「全部は食べられないから明日も食べれるよ?」

っと言うと今度は明日は何にしよう・・・っと難しい顔をして考え込むのが面白い。

「まず今食べたいものを選べば良いんだよ」

美優は照り焼きバーガーを、弟はポテトを頬張りながらフィッシュバーガーに手を伸ばした。

その姿を見てほっこりする。

(真面目に生きている人が不幸になるのは絶対に許せないな)









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