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第96話

 カムリィの脳内での情報整理も終わった頃、タイミングよく担当女性の声がノア越しに聞こえてきた。


「お待たせいたしました。確認したところ、確かにムイさんとロアさんは今から三年前にリバーシ加入試験を受け、その結果落ちてしまった事が明らかになっています」


「……! やっぱりか、ありがとうございます」


「ええ。ですが、その……このお二人、來冥力の覚醒まで進めましたのに不合格になっているんです。こんなの見た事ありません」


「それについては俺の予想通りなので大丈夫です」


「え? そうなんですか。さすがリバーシ内でも屈指の実力者なだけありますね」


 表情が分からない為、お世辞か本音かは不明だ。しかし声の感じからしてカムリィの発言にどう返したら良いか迷った結果、取り敢えず褒めておこうの思考に陥ったような感情のこもっていないものだった。


「それより再度確認させてください。この二人が受験して落ちたのは今から三年前で間違いないですか?」


 恐らく彼女から得た情報の中で最も重要なポイントであるとカムリィは確信している。今から三年前となれば色々と繋がってくるからだ。


「はい。二人が不合格になったのは今から三年前で間違い御座いません」


「そうですか。分かりました、ありがとうございます。 (三年前……つまり例の暴行事件が発生した時期と同じだ。コハクが『本当にロアはただの被害者なのか』って言ってた事も踏まえると、何か繋がりはありそうだな) 」


「あの」


 一人思考の海に潜っていたカムリィは担当女性の声で現実世界に引き戻された。


「……! はい。何ですか?」


「他にご用件は御座いますか?」


「そうですね……ムイとロアが過去の受験者だと分かっただけでも大きな収穫ですので、これ以上は特に……。……。 (待てよ? まさか……いや、さすがにそんな事ある訳……でもせっかくの機会だ。確認するだけなら損は無い。) すみません。本当は最初にお伝えできれば良かったのですが、今ふと思い付いてしまいまして」


 カムリィがこれから伝える事は担当女性からすれば二度手間になってしまう。もしも彼の言う通り最初から伝えていれば手錠双璧と併せて調べ、まとめて結果を伝える事ができていただろう。


「お気になさらず。情報を得た事で新たに疑問が生じたり新たな発想が生まれるなんて当たり前の話です。それで他に調べて欲しい事とは?」


「はい。コハクから伝えられた謎の一つとして、今回の異世界運用に暴行事件の加害者と被害者がキャスティングされている理由は何か……これを答える必要がある話をした事を覚えていますか?」


「ええ、覚えていますが……あ。もしかしてそのお二人も、当時の受験生だったのではないかを調べて欲しいと?」


「仰る通りです。お願いします。その事件も今から三年前……これが偶然とは思えませんし、もしかしたら繋がりがあるかもと思ったんです。それと、当時ムイとロアに不合格通達をした試験監督が誰かも教えていただけると」


 カムリィの考えを理解した担当女性は迷う事なく、その提案を了承した。


「かしこまりました。試験官および該当二名も確認してみますので、まずは対象となるお二人の名前をお願いします」


「ありがとうございます。まず一人が……」


 カムリィはシルベルスに転生予定の主人公Aと主人公Bの名前を教える。


 普通に考えれば情報漏洩になるのだが、その点を咎めていてはリバーシの存在意義を否定したも同然だ。


 特に罪悪感に襲われる事なくカムリィは二人の名を告げ終わり、その結果を待った。

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