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第95話

 カムリィの話を聞き終えた担当女性は数秒だけ黙った後に自身の中で結論を出した。


「かしこまりました。転生協会内で手錠双璧と呼ばれている二人組『ムイ&ロア』について、データを確認してみますので少々お待ちください。あなたの予想が当たっている場合は不合格判定を受けた過去の受験者としてログが残っているはずですので」


「……! はい! ありがとうございます! よろしくお願いします!」


 取り敢えずは第一関門を突破した喜びからカムリィはテンション高めでノア越しにお礼を言う。もしもこの部屋が防音性じゃなかったら外まで聞こえていた事だろう。


 担当女性は早速データの確認に取り掛かる。この待機時間はもどかしいが何とか我慢して待ち続けるしかない。


 狭く薄暗い部屋の中で仄かに照らされる明かりをジッと見つめたカムリィは、自分の考えに間違いは無いはずだと言い聞かせる。


 コハクは言った。手錠双璧は普通じゃない方法で今の來冥力を手にしていると。


 これは別に犯罪に手を染めたとかドーピングとか、そのような闇のルートを匂わせる発言ではなくリバーシが関連した方法では無いかとカムリィは考えている。


 來冥力は誰しもが所有できる力だが、その強弱に関してはどうしても運によって左右される。來冥者とそうでない者の二分化になっているのがその証拠だ。しかしながら來冥者であったとしてもリバーシのような桁外れの來冥力ともなれば本来運だけでは到達できない領域となっている。


 ではどのようにしてその力を得るのか。それはアルカナ・ヘヴン内では一部の限られた者だけが把握している異世界に身を置き、特定条件を満たす事で入手可能だ。


 界庭羅船があらゆる異世界を行き来できる事から分かるように、この世にはアルカナ・ヘヴンとモデルN以外にも数多の異世界が存在しているが、その内の一つである。


 その異世界では來冥者が一定期間過ごすと、『才能ある者』は強力な來冥者に覚醒可能な環境である事が判明していた。


 この才能があるかどうかを見極める試験をエンペル・ギアはリバーシ受験者に課す訳だが、司、カムリィ、コハクはこの試験に無事合格し、その力を手に入れた。


 リバーシの力をエンペル・ギアの切り札にする為に世間には公表されていない異世界となるが、もしも手錠双璧が過去にリバーシを受験し、その異世界で強力な來冥力を手にしていたのなら確かにコハクの言う『普通ではない方法』に該当する。


 そしてカムリィが知る限り、それ以外の『普通ではない方法』による來冥力の覚醒は存在しない。つまり単純なカムリィの知識不足の可能性を除外すれば、消去法で手錠双璧がリバーシの受験者だったかも知れない事になるのだ。


 そしてこの話を持ち掛けたコハクは当然リバーシ関係者だと容易に想像できる。


 同時に会議室で彼女が口にした『カムリィだったらピンと来るのでは』という発言は、カムリィがリバーシの人間ではとコハクが疑っている可能性も浮上させている。これはつまり『リバーシの人間だったら普通じゃない方法による覚醒も知っているはずだ』というニュアンスの発言となるからだ。


 ここまで脳内整理を行ったカムリィは、何故手錠双璧が現役リバーシの人でも候補生でもなく、『試験に落ちてしまった人』と考えたのかについて再度思考を巡らせた。


「 (けど、もしこの予想が当たっていた場合……あいつら、さすがに可哀想だよな。才能があってリバーシでも問題無い來冥者に覚醒できたにも拘わらず、不合格になっちまったんだからよ……) 」


 当然ムイとロアが過去にリバーシ加入試験に挑戦し、來冥力の覚醒まで進めたのに落ちてしまったなど現段階ではカムリィの脳内での話に過ぎないのだが、これが当たっていた場合を考えると自分の事のように悔しい気持ちになる。


 だがエンペル・ギア側の立場に立って考えると、何故才能ある二人が落とされたのかカムリィには分かる。その理由が理由なだけに、やるせない気持ちになってしまうのだ。

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