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第93話

 エマが司に接触したその日の夜。


 カムリィはモデルNの立ち入り禁止の危険区域に居た。ユエルとマキナが戦った場所も危険区域ではあったが、その時とは別の場所を彼は歩いていた。


 アルカナ・ヘヴンの來冥者の間では常識とされている知識が一つだけある。それはアルカナ・ヘヴンからモデルNに転移する時、どの場所から転移すればどこに降り立つのかは決まっているという事だ。


 つまりアルカナ・ヘヴンのA地点から転移を試みれば、必ずモデルNのB地点に到着するという事であり、ランダム要素は皆無なのである。


 マキナが初めて司とユエルに会った資料室前で転移すれば、彼女たちが戦った危険区域に降り立ち、蓮によってカムリィが無理やり転移させられた場所で再度転移を行えば別の危険区域に降り立てる。


 カムリィがこの危険区域に居る理由は、エンペル・ギアに行く為だ。


 エンペル・ギアは五大機関の一つであり、その中でも頂点に立つ最高機関である。政治を中心に行っており、他の五大機関のまとめ役も担っている。また諜報機関『リバーシ』を配下に従え各国にスパイを送っている面も持ち合わせており、カムリィや司にとっては馴染み深い場所であるだろう。


 普通であればアルカナ・ヘヴン内で堂々とエンペル・ギアに向かえば良いのだが、周囲からは転生協会関係者で通っている為、もしも普通に向かったら変に怪しまれてしまう。


 だがモデルNの転移仕様を上手く活用すればこっそりと中に忍び込めるのだ。


 アルカナ・ヘヴンのA地点→モデルNのB地点へ転移→モデルNのC地点まで移動→アルカナ・ヘヴンのD地点へ転移のような移動法が、候補生含めたリバーシ全員に義務付けられている。


 リバーシの関係者はまずどこからどう移動と転移をすれば目的地へ辿り着けるかを暗記させられる事になり、カムリィとて例外では無い。


 更にリバーシがエンペル・ギアに出向く際は事前に予約を取る必要がある。基本的にリバーシがエンペル・ギアに行く理由は報連相をする為となるのだが、そのやり取りは漫画喫茶の個室サイズの部屋でリモートで行われる。


 当然報連相用のその部屋には数に限りがある為、予約は必須だ。


 カムリィはまさしく予約部屋内に転移する為に今モデルNを歩いている。エンペル・ギアに通じる転移地点は部外者が間違って転移しないよう、危険区域ばかりに用意する事で対策としているようだ。


 マキナとユエルのようにリバーシ以外の人間が意図せず危険区域に訪れてしまう場合も十分に有り得るが、そのパターンを考慮していないエンペル・ギアでは無い。


「……おし、着いた」


 カムリィが目的地へ到着すると、その場所に人型のロボットが仏像のように鎮座していた。動ける様子は皆無であり、地面に接着されているような佇まいだ。


「男性の姿を確認。名前と予約部屋を」


 人間からは出せない機械的なボイスがロボットから発せられた。


「ご苦労さん。今日二十時にA⑩号室を予約していたカムリィだ」


「カムリィさん、お待ちしておりました。転移を許可します」


 このロボットは見張り用ロボだ。報連相用の部屋へ転移可能な領域に足を踏み入れた瞬間、このロボはそれを感知し、対象者へ話し掛ける。


 その際に先程のカムリィのような受け答えをし、照合した結果問題無いと判断されると許可が下り、無事転移可能となる。


 この時見張り用ロボの質問を無視して無理やり転移した場合、即エンペル・ギアへ報告が行き届き、転移先で無事捕獲される。転移は一瞬で行われるものではなく、ある程度の時間差が生じる為に行える対策だ。


 過去を遡ってもそんな事例は無いのだが、今日までこの対策は続いている。

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