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第9話

 ムイとロアが評価対決について考えを巡らせていたその頃、司の部屋では変わらずパーティーの時間が流れていた。


 だがそんな中一人だけいつもと様子が違う人物が居た。その人物はイスをわざわざ司の左隣に置き、座ったかと思えば左手にグラスを持ったまま顔を赤らめながら右腕で司に肩を組んできた。


「司く~ん! パーティー、楽しんでるか~? うぇへへへ」


 誰がどう見ても酔っているとしか思えない琴葉からは、アルコールと果実が混じったような香りがしてきた。


 アルカナ・ヘヴンでは十八歳を迎えたら成人済みと見なされて酒を飲んでも良い事になっており、琴葉はギリギリではあるが一応十八歳という事でこの中で唯一飲酒ができる年齢である。


 未成年が三人居る中で自分一人だけ酒を飲むのは、と最初こそ躊躇っていた琴葉だったが司たちがそんなの気にしなくて良いと気を遣った結果、彼女だけ酒を飲んでいる状況になっている訳だ。


 開始時から美味しそうに飲んでいたようだが楽しさも相まって多量摂取してしまったらしく、すっかりでき上がっている。


 ハイテンションで司に絡んできた琴葉は体を密着させて顔も彼に近付けた。


「ちょっと、琴葉さん……!」


 彼女の体温を直に感じ、司はドキドキしながら申し訳程度の抵抗をする。この辺りは司も普通の男の子の反応を見せるようだ。


「ん~~~? 何だ、照れてるのか~? ふふ、可愛い奴め」


「わ、えと、あぅ……」


 刺激が強かったのか、ユエルはその光景を前にして顔を真っ赤にして慌てふためいている。マキナはと言えば興奮しながら目を輝かせていた。


「くっつきすぎですって!」


「嫌なら本気で抵抗しても良いんだぞ?」


 ニヤニヤしながら挑発するように言う琴葉は完全に悪酔いしている。こんなダル絡みをされるのなら初めから酒の許可なんか出すんじゃなかったと後悔した司だが、今更しても遅い。


「いや~、君くらいだよ。そんなに面白い反応してくれるのは。ふふふ。私が居る部署にはさぁ、基本的に大人しか居なくてね。周りのオッサン共は私を子ども扱いするしさ。そりゃあんたたちから見たら私なんてまだ子どもかも知れないけど……一応さぁ! 私はさ! もう十八なんですよ十八ぃ~。この世界じゃもう成人扱いなんだから、それ相応の態度で接して欲しいって言うかさ~」


 上機嫌な笑顔で言っているせいか、今彼女は怒っているのか楽しんでいるのかよく分からない感じになっていた。司へ密着する事は無くなったが、楽しそうに体を揺らしては酒を口に運び、止まる事を知らない。


 普段のストレスもあってか仲のいい友人たちと騒げる時間が楽しくて仕方が無いのだろう。


 それを察してか司たちは琴葉を制止する事はなくもう少しだけ様子を見ようとしていた。


「ふふふ。なぁ、司くん。君から見て私ってどうだい?」


「は? どうって…… (まずい、これ一人の女性としてどうかみたいな質問でしょ、絶対……!) 」


 チラッと横を見てユエルに助けてくれと目で訴えるが、彼女は先程から言語化不可能の言葉を口から発しながら司以上に照れており、とても助け舟を求められる状況では無い。


 マキナはノアを展開して面白そうに今の状況を記録として残そうという、ヘルプとは真逆の悪魔染みた行動に出ていて期待はできそうに無かった。


「だーかーら! 司くんから見て私ってどんな風に映っているかって聞いてるんだよ。ほらほら。照れずに答えなよ~」


 司よりは二つ歳上である事から、さすがに彼も自分を子ども扱いはしないと思ってこんな質問をしてきたのだろう。


 どうやら人事部内で周りの大人たちから大人として見られていない事が琴葉にとっては結構なストレスなようだ。

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