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第88話

「何だ、そんな事? んふふ……無い脳みそフル活用して考えてみたら~?」


「……。 (多分子どものこういう発言をいちいち気にしないのが、大人になるって事なんだろうなぁ) 」


 ニヤニヤと意地の悪い笑みを浮かべながらエマは司を見る。


「で? で? 何かそれっぽい答えは思い付いたかしら?」


 彼女からすればクイズ感覚なのだろう。司がどんな答えを口にするか楽しみにしているように見える。


「ちょっと待ってよ。今考えてるから。それとね……いい加減僕の脚から降りて欲しいんだけど。軽いとは言えずっと乗られるとさすがにキツいよ」


「仕方ないわね」


 不満そうな声を漏らしながらもエマは素直に司の脚から降り、病室の床に着地する。そして再び偉そうに腰に手を当てたポーズを取った。


 人一人分の重石がなくなった事による解放感に喜びつつも、司は界庭羅船の情報収集能力について思考を巡らせ続けていた。


 エマは人工異世界について調査する為に協会内に侵入していた。年齢も服装も自由な協会だからこそ、誰も彼女に対して違和感は抱かなかった訳だ。


 司が先程口にした、界庭羅船が把握している事の共通点は全て協会が情報源となるものばかりである。単純に考えれば協会内での聞き込みや盗聴器を仕掛けるなどをしての情報入手が挙げられるが、そんなやり方では説明が付かないものだってある。


 例えば新旗楼についてだ。協会内でもトップクラスに情報漏洩対策が成されているエリアで、それもコハクの自室で初めてユエルに話した新情報を界庭羅船は何故か把握している。


 元々は牢政のトップと話を進めていた為、そういう対策組織の設立自体の情報入手経路は他にもありそうだが、重要なのは新旗楼という組織名まで知られていた点だ。


 コハクはユエルに名前は昨日の夜に酒を飲みながら考えたと言った。つまりコハクの中で命名されたのはつい一昨日の事であり、その情報がコハクの脳内から外部へと飛び出したのは昨日の朝が初めてなのだ。


 一体界庭羅船はいつ、どのようにして知ったのか。まるで予想ができない。


「……。降参。こんなの素人がマジックのタネを初見で見破れって言われてるようなものだよ」


 しばらく考えた司だったが、これ以上頭を働かせても答えには辿り着けない事を察し潔く両手を軽く挙げた。


「うんうん。やっぱりあんた如きには分からないでしょうね~」


「はいはい僕の負けで良いから。それで、答えは何なの? まさかここまで来て教えないとかは無しだよ」


「そんな意地悪な事はしないから安心して。こっちだって人工異世界に関する情報をあんたから得ようとしているんだから」


「意外とその辺はしっかりしてるんだね」


「意外とは余計よ。ま、とにかく、あんたの疑問はしっかり解決してあげるから安心して」


「それはどうも」


 正直司はエマに教えてあげられる程の情報を持ち合わせていない。だが相手は司が協会内の人間である事から、人工異世界について詳しく知っているだろうと勘違いしている。


「 (僕は創生班じゃないから人工異世界に関しては本当に初歩的な事しか知らないし、エマが協会内の調査で得た情報以外何も知らない可能性だってあるけど……まぁ僕が協会の人間だから当然詳しいだろうっていう自分の認識に誤りが無いかの確認を怠ったこの子のミスって事にしておこう) 」

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