表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
87/203

第87話

 司の質問に少女は答えない。無言状態を貫き、司に跨ったまま彼を見つめていた。


「君たちが『世界地図』を使って異世界間を自由に行き来できるのは把握している。過去に色々教えてもらった事があるからね。クオリネとの一件があった僕の病室にわざわざ来たんだ。何の目的も無しに偶然ここに転移しちゃったなんて言い訳は通用しないと思った方が良いよ」


 彼女はインターン生の身ではあるが、界庭羅船の一人として活動はしているはずだ。


 クオリネはリバーシについて探りを入れていたようだが、この少女も同じ目的なのだろうか。リバーシについて教えるつもりは一切無い固い意志を、司はクオリネへと既に見せている。情報の共有をしているのであれば、その事は少女にも伝わっているだろう。


 そう仮定するのであれば果たして司に接触を試みた理由は何なのか。


 少女は少しだけ考える素振りを見せた後に閉じていた口を開いた。


「昨日もあんたと同い年くらいの女に名前を聞かれたわね。ま、一日だけとは言え界庭羅船のせいで異世界運用を進める上での大事な会議に出席できなくしちゃった訳だし? お詫びに答えてあげても良いわよ。あたしのせいじゃないのに責任を取ろうとするなんて、ああ……あたしって何ていい子なのかしら」


「 (僕と同い年くらいの女性……マキナの事か? やっぱり昨日、彼女が会ったのはこの子で間違い無さそうだな) 」


「ちょっと。最後の発言にツッコミは無いの? せっかくツッコミポイント作ったのに。まぁ良いわ。あたしの名前はエマ。呼び捨てで良いから。歳は十一」


「エマ……」


 無意識に司はそのまま彼女の名を口にした。マキナが知りたがっていた少女の名を司はあっさりと知る事ができた訳だが、この情報が今後どう活きるのかは不明である。


「そして、あたしの目的はね……人工異世界について情報を得る事。だから協会にも潜入してるの」


「……! どうして界庭羅船が人工異世界の事を……」


 まさかあの界庭羅船がそれを目的として行動しているなどとは全く想像していなかった司は、脳内がハテナで満たされる。


 司の問いにエマはもったいぶる事なく即答してみせた。


「簡単よ。あたしたちはモデルNの調査も行っているから。協会で創っている人工異世界は、まさにモデルNをモデルにしてるんでしょ? 何か手掛かりがあると思ってね」


「モデルNの調査って……何の為に?」


「はぁ? 白々しいわね。『世界地図』の存在を知っているあんただったらきっと、ピンと来るんじゃない? あんたに色々教えたであろう人から同じく教えてもらわなかった? モデルNは全異世界の中でも未知に包まれている世界の一つだって。何せあの世界は世界レベルがゼロの世界なんだから。界庭羅船は全世界の犯罪者がお客様になり得るの。異世界について色々知識を蓄えておくのも仕事の一つなのよ。世界レベルがゼロの世界は、まだまだ謎が残されているからね。その調査の一環として協会の人工異世界に目を付けたの。あ、ちなみに。その調査の過程で新旗楼について知っちゃって、クオリネに教えてあげたって感じね」


 ここまで聞いた司は一つだけ疑問に思う事があった。


 実はクオリネと話した時からその疑問は心のどこかで感じてはいたのだが、あの時はその事に気を配る余裕などなくスルーしてしまっていた。


 界庭羅船に対して警戒しているという意味では状況は変わらないのだが、今の方が何倍も落ち着きはあり、抱いた疑問を明確に言語化できる事に成功した。


「目的については分かった。けど一つだけ腑に落ちない事がある」


「ん?」


「君、コハクさんが新旗楼を設立しようとしている事を、一体どうやって知ったの?」


 人工異世界の事や司が会議に出られなくなった情報は協会での潜入捜査で得られそうだが、新旗楼はそう簡単に調べがつくものでは無い。特に新旗楼に関しては協会内のコハクの自室で話が行われたのだ。調査どうこうで得られる情報では無いだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ