第86話
犯罪者の味方をする頭のおかしい組織の職業体験など、何かの冗談としか思えない。
「ま。あたしは確かに正式なメンバーに比べたらまだまだだけど、あんたたちみたいな雑魚にはぜぇったいに負けないくらいには強いから、インターン生くらいなら勝てるんじゃ? っていうバカな希望は抱かない事ね。頭悪いのがバレるわよ」
偉そうなポーズのまま得意げな顔で語る少女はどこか楽しそうだ。
「……」
一体どんな教育をすればここまで生意気な口の悪い子どもに育つのか。親の顔が見てみたいと思った司だが、その言葉を口に出すのを何とか堪える。
ヘタに刺激して怒りを買い、よく分からない異世界へ連れて行かれたら困るのは司の方だ。わざわざ自分から不利な状況に持っていく訳にはいかない。
「あ。美味しそうなリンゴ発見! 一個貰うわよ」
「お好きにどうぞ」
「いっただきまーす! ん~うま~」
無邪気な笑顔で美味しそうにリンゴを食べる姿は普通の子どもだ。口が悪いのもただ生意気なだけと捉えればそれまでであり、この奇抜な格好を除けば普通の女の子と言えなくもないだろう。
だがそんな女の子相手に司は全神経を集中させて警戒している。警戒せざるを得ない。
「このリンゴ、あんたへのお見舞いの品でしょ? 食べないの?」
「ちょうど食べようと思ってたところに君が現れたんだよ」
「あら。それは悪い事したわね」
全く悪びれて無さそうな態度の少女はリンゴをひょいと摘まむと、そのまま司の脚の上に馬乗りするように跨った。
「何のつもり?」
「お詫びに食べさせてあげようと思って」
「……」
クオリネと言い、この少女と言い、思考回路が全く読めない。司はどう反応したら良いのか、この場における最適行動は何かと考え固まってしまう。
「こんな美少女に食べさせてもらうなんて嬉しいでしょ? ほら、あーん」
少女はリンゴを司の口元まで近付け、満面の笑みを浮かべる。
「……」
「あーん」
「……」
「……」
「……」
「早く口開けて食え」
「はぁ……」
ここは素直に言う事に従った方が良さそうだと思った司はお望み通り、口を開けた。
「はい、よくできました~」
「 (何なんだよ、これ。僕は一体何をさせられているんだ?) 」
恐らく今最も適しているであろうツッコミを心の中でした司は、釈然としない気持ちを抱いたままリンゴを咀嚼する。マキナやリンゴ農家の人には悪いが今の司に味を楽しむ余裕など皆無である。
何とかリンゴを飲み込んだ司はそろそろ本題に入ろうと思い、目の前で跨っている少女に質問をした。
「二つ聞かせて欲しい。君の名前と目的だ」




