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第72話

 カムリィが解くべき謎は全部で五つ。

 

 その一。ロアが被害者となった事件とムイが加害者となった事件の真実とは何か。

 

 その二。手錠双璧はどのようにして特殊な來冥力を入手したのか。


 その三。何故今回の異世界運用において事件の関係者をラスボス役と主人公に抜擢したのか。


 その四。事件とは無関係の司とユエルを対戦相手としてキャスティングした理由とは何か。


 その五。今回の異世界運用における真の開催目的は何か。


「オーケー、俺の中で整理はできた。わざわざありがとうございます」


「良いのよ、別に。私もあなたがどこまでやれるかワクワクしているし」


「ご期待に応えられるよう頑張りますよ。絶対に会長の頭の中暴いてやりますから、覚悟しといてくださいね」


「ふふ。楽しみにしておくわね。答え合わせは評価対決開始一時間前……転生協会最上階の私の部屋で」


「分かりました。その時間に調査結果を報告に向かいます。それじゃあこの辺で俺は失礼しますね。一秒でも無駄にする訳にはいかないので」


 そう言うとカムリィはコハクに会釈すると会議室を後にする。室内にはポツンと一人取り残されたコハクだけという状況になった。


「ふふ。最近は本当に退屈しないわね。これはますます面白い事になりそ……ん?」


 ふとコハクはテーブルの上に置かれた会議室の鍵が目に入った。本来であればカムリィが戸締りをするはずだったが、その彼は業務の残りと調査をする為に会議室を出て行ったばかりでここには居ない。


「もう……戸締りも忘れて出て行くなんて。ふふ、私の計画を知れるチャンスがようやく巡って来たんだもんね。きっと頭の中はもうそれで一杯なんだろうなぁ……」


 可愛い部下を見守るような慈しむ目になったコハクは鍵を掴んで優しく握り、カムリィが出て行った事で開かれているドアを眺めながら小声で言葉を発した。


「あなたが本当にリバーシの人だったら、今回の謎……当然解けるわよね? 私にあなたの実力見せてもらうわよ」


 コハクの中ではカムリィがリバーシである可能性は極めて高いが、まだ確証は得られていない。


 今回の件が上手くいけばコハクの計画は実現に向けて一歩どころか五歩は進みそうだ。その為にもカムリィにはぜひともこの壁を乗り越えて欲しいものである。


 リバーシが対抗できるかどうか未だに不明となっている最強の犯罪組織『界庭羅船』を相手にするのだ。彼らを迎え撃つにはこちらも過剰なまでの戦力を揃えておく必要がある。


 転生協会に絞った場合、カムリィは味方にすべき最有力候補になる事は間違いない。彼がどんな調査結果をコハクに報告するのか、彼女は今から楽しみでしょうがなかった。


 コハクは会議室の部屋の電気を消すと、そのまま部屋を出て鍵を閉める。そしてその後指定の場所へと鍵を戻し、自室へと戻るのだった。


 その間彼女は終始楽しそうにしており、ようやく訪れた自身の計画の進展の兆しに嬉しさを隠し切れないといった様子だ。

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