第70話
「私はあなたが本気を出して調査と推理をすれば、評価対決当日までに今あなたが抱いている疑問全てに対して、自分なりの答えを見つけ出せるんじゃないかと思ってるわ」
コハクはカムリィに絶大な信頼と期待の眼差しを向ける。そんな彼女の気持ちと眼差しを正面から受け止められなかったカムリィは、困ったように苦笑した。
「俺の事過大評価し過ぎですって。コハク会長にそう思って頂けるのは素直に嬉しいですがね」
「ふふふ。謙遜しないの。まぁ宿題とは言ったけど、その宿題を提出するかどうかはあなたの自由よ。強制はしないけど、どうしても気になるなら……そしてできる事なら自分の力で答えに辿り着きたいのなら頭と人脈をフルに使って頑張ってみなさい。日々の業務に影響が出ない範囲でね」
コハクはカムリィよりも六つも歳下だ。それでもたまにカムリィは会長だからという色眼鏡抜きで、彼女が自分よりも歳上に感じる事がある。
思わず首を縦に振って「はい」と言ってしまうような、そんな雰囲気を彼女からは感じ取れるのだ。
「コハク会長」
「何かしら?」
「もしも会長が鴻仙総監と協力して何か動いているとして、もしも俺がその計画に参加するとしたら……俺は役に立てますか?」
「……! (よっっっしゃあああああ! 乗って来たわね!) ふーん、あなた面白い事聞くのね。そうね……これ以上ないくらい心強い味方になるんじゃないかしら。正直今すぐにでも仲間になって欲しいくらいね」
カムリィの申し出が相当嬉しかったのか、珍しく冷静さを少し欠いた様子で前のめりな様子になる。どれだけ本心を曝け出さない人であったとしても、根っこにある部分を刺激されればその感情は浮き彫りになるという事だ。
だが彼女のそんな時間は仕事中においては本当に貴重なようで、すぐに冷静な口調で続きを話す。
「でも、もし仲間にするのであればそれ相応の実力を見せてくれないとね」
「……」
コハクは人を見る目に関しては絶対の自信を持っていた。カムリィに対する評価は決して過大なものでは無いとコハクは断言できる。だがそれは残念ながら普段の業務内でのカムリィに限った話となる。
カムリィの予想通りコハクは彼がリバーシの一員なのではと疑っているが、証拠はなく意味深な発言で動揺を誘う事でしか今は判断できない状態でいる。
來冥者としての実力も不明な中、普段の姿だけでカムリィを仲間にする事はできない。少なくともリバーシであるという確証が得られない限りは。
その証拠にカムリィが間違いなくリバーシの人だという絶対的な証拠と確信があるのであれば、こんな回りくどい事をせずともユエルにしたようにストレートに誘えば良いだけの話なのだ。それをしないという事はコハクの中ではまだ予想止まりであり、慎重にならざるを得ない段階であるという事だ。
「正直、コハク会長ならそう言うと思ってましたよ」
カムリィは一歩前に歩み、コハクとの距離を詰めた。そして彼女の事を見下ろしながら八重歯を見せて微笑む。
「一つお願いがあります。さっきコハク会長が出した宿題……これに対する俺の答えが正解の場合、その計画に俺を混ぜていただけませんか?」
「え?」
「つまり宿題ではなくて加入試験にする。会長だって調査と推理を満足にできないような奴を仲間にしたくはないでしょうしね。どうです? 悪くない提案でしょ」




