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第69話

 マキナがまだ手錠双璧と会話をしている時、カムリィはコハクから問い掛けられた疑問に対して考えを巡らせていた。


 三年前に今回司たちが相手にする二人の主人公によって、暴行未遂の被害を受けたとされるロアだが、コハクの口振りからするに彼女がただの被害者では無いと考えているようだ。


「ロアがただの被害者じゃない……? そんなバカな……意味深な事言って誤魔化そうとしてません?」


 カムリィはロアの事件について深く調べた訳では無い。必要最低限の概要くらいしか頭に叩き込んではいない為、彼女の言う通り真実は違っていたという展開も十分に有り得る。


 だがカムリィが今相手にしている人はコハクだ。


 何を考え、どこまでが嘘でどこからが本心なのか考えが全く読めない女性である。何故今回の異世界運用を計画したのか、その真の目的を上手く隠す為にそれっぽい謎めいた事を適当に口にし、カムリィを混乱させているだけかも知れない。


「そう思うならそれでも良いわ。けれどこれだけは言っておくわね」


「何ですか」


 コハクは一拍間を置くと今日一の真剣な表情になり、まるで予想でも何でもなく確信しているかのように、その発言をした。


「ムイとロアは間違いなく普通じゃない方法で今の力を手に入れてる。これだけは絶対の自信を持って言えるわ」


「は?」


「普通じゃない方法……()()()()()ピンと来るんじゃないかしら?」


「……」


 妙に自信満々のコハクに見つめられたカムリィは、口にこそ出さなかったが一瞬で三つの予想を立てる事に成功した。


 一つ目はコハクがカムリィの『正体』に勘付いているのではないかという事。


 二つ目はムイ&ロアがカムリィと同じ方法か類似した方法で強力な來冥者になれた事。


 三つ目はコハクが元リバーシの人である可能性が高い事。


 もしもカムリィの予想が当たっていた場合、彼はリバーシとして今後も活動を続けていけるか――その生殺与奪の権利をコハクに握られている事になる。願わくば彼女の心の中に留めておいて欲しいところである。


「正直何故俺ならピンと来ると思っているのか、皆目見当は付きませんが……まぁ取り敢えず今は会長の話を信じる事にしますよ」


 内心では焦っているはずなのにそれを表に出さない辺り、さすが現役のリバーシメンバーと言えるだろう。バレない事が絶対条件ではあるが疑われる可能性は日々彼らに付きまとう。


 リバーシの人だとバレているのではないか、と思ったとしてもそれを表情や態度に出してはならない。どちらかと言えばそういった強い心の方が彼らに要求される力なのだ。


「ふふ、ありがと」


「でもロアがただの被害者じゃない事……そしてあいつらが普通じゃない方法で今の來冥力を手に入れた事……それらが本当の事だとして、今回の異世界運用とどう関わってくるんですか?」


 一旦はコハクの話が全て真実だとして話を進める事にしたカムリィは、それ前提で物事をまずは考えてみる事にした。


 その結果分かった事は結局コハクの頭の中はコハク自身にしか分からないと言う事だけだった。彼女程腹の底が読めない人間は居ないだろう。


「それはね……」


「……」


 固唾を呑んでコハクの回答に期待を寄せるカムリィだが、その緊張感は一瞬にして砕かれる事になってしまった。


「あなたへの宿題にしようかしら」


「……!」


 先程までの真剣な表情のコハクはどこかへと消え、今のコハクはいつもの人をからかう時のような意地の悪い笑みを浮かべていた。


 カムリィとは違いこの状況を楽しんでいるようにも見える。

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