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第63話

「司とユエル、そして手錠双璧の四人ですか。俺はコハク会長の目的を知らないから何でその四人が必須なのかは分かりませんが、少し可哀想ではありますね」


「可哀想?」


「はい。協会とは無関係の、会長がこっそりと水面下で動いている別目的の為に利用されているようなもんじゃないですか」


「人聞きが悪いわねって言いたいところだけど、確かにそうね。一応手錠双璧の二人にはあなたたちには弱点があって、それを気付かせてくれるのに適した二人が司とユエルだって嘘の理由は伝えて無理やり納得させておいたけど」


 その時の事を思い出しながらコハクは話す。いきなりそんな心当たりが無い事を言われたムイは困惑していた。


 もしもあの発言が真っ赤な嘘で本当は弱点なんかなく、ただコハク個人の目的の為に利用されたと知ればどんな反応をするだろうか。そんなの彼の性格を考えれば火を見るよりも明らかであり、盛大にキレ散らかす事だろう。今の内にコハクは謝罪の言葉を考えておいた方が良さそうだ。


「まぁプライドが高いあの二人だったら、そう言われると逆に勝ってやって自分たちには弱点なんか無いと証明してやるって意気込むでしょうね。ちなみにですけど今回の評価対決が終わったら本当の目的を明かす気はあるんですか? 俺や他の奴らにに明かす義務は無いと思いますけど、少なくとも会長に協力してくれた四人には、教えるべきなんじゃないですか?」


「評価対決が私の思い描く『成功』と呼べる形になったら教えるつもりよ。だから結果次第としか言えないわね」


「そうですか」


 目の前の女性が何を考えているのか。それが分からない今これ以上カムリィが突っ込んだところで無駄だろう。そう思わせるには十分すぎる程のあっさりとした返事だった。


 もうコハクから得られる情報は無いはずだ。そう思った矢先、カムリィは重大な事を思い出して、最後にこの確認だけはしておこうとコハクにとある質問をした。


「そうだ。最後に一つ良いですか」


「ええ、良いわよ。どうそ」


「会長の裏目的を達成させる上で必要なキーパーソンとして、手錠双璧を挙げたじゃないですか。……今回、司とユエルが受け持つダブル主人公と手錠双璧の間に何があったのかを詳しく教えてもらう事はできませんか?」


「……」


 コハクを口を固く閉じ、すぐに返答はしない。もしもダメならここで即答しているはずである。つまり絶対に教えられない秘密ではなさそうだ。


「俺らサイドが担当する主人公二人の情報が降りて来た時、あなたから聞いた話だと彼らの間に起こったのは『暴行事件』。事件が起こったのは今から三年前……偶然にも司の妹が殺された年ですね。被害者はロアで加害者は今回の主人公二人……最悪な事態に発展する前にムイが助けに入った事によって未遂で止める事ができた訳ですけれど、キレたムイから二人は身を守る為に慌てて逃げたところ、事故に遭って死亡……でしたよね?」


 実際に逮捕されたり裁判にかけられる前に二人は死亡し、ムイ&ロアも何故か事件の事を公にはしなかった。もっとも、いくらロアが被害者とは言え彼ら二人を間接的に死に追いやったムイにも罪はあり、その罪を隠し通す為とも考えられるがモヤモヤ感は残る。


 つまり最終的に暴行事件は無かった扱いになり、主人公二人の事故事件だけが事実として処理された訳だ。


「合ってるわ」


「世間には公表されてもいないこの情報を、鴻仙総監に教えられた訳ではなく、あなたは何故か()()()()()。ムイ、ロアがあなたに教えるなんて有り得ない話ですし、その事件と何らかの関わりをあなたは持っているんじゃないんですか?」


「ふぅん。さすがね」


「……!」


 適当に誤魔化されるか嘘でも吐かれるかと思っていたカムリィの予想とは異なり、コハクは拍子抜けするくらいにあっさりと認めた。

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