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第56話

 ここで一区切り付いたのか、司はカムリィを見て彼の反応を待つ。やがて司のその気持ちに気付いたのか、カムリィは小さく息を吐いてから閉じていた口を開いた。


「良いんじゃねぇのか? その設定ならどっちが欠けてもこの物語は成立しなさそうだしな。ダブル主人公の意味は、最低限あると思うぜ。多分調査をその三人で進めていく内に主人公Bには災害を一定期間抑える能力があるって判明する展開だろ? 二人の主人公が自身の能力の存在に気付くまでの流れも違和感ねぇし、俺は文句無しだ」


 お世辞や妥協で言っている訳ではなく、その言葉はカムリィの本心だった。


 二人の内のどちらかが欠けると意味が無くなる。まさにこの部分に全てが詰まっているだろう。主人公A、Bの双方に主人公としての存在意義があり、カムリィが求めていた答えと言える。


 司はカムリィの言葉に思わず笑みが漏れ、喜びの感情で満たされた。だがすぐに気を引き締めラスボスの方についても話し始めた。


「では細かい展開は一旦抜きにして主人公サイドの設定の説明は終わりますね。次にラスボスについてですが……」


 正直ダブルラスボスについては主人公よりも存在意義を考える事が難しいはずだ。何故ならば『倒すべき最後の敵』としてボスが二人居る必要性はなかなか無いからである。


 大抵が一人でも成り立つ場合が多く、わざわざ二人用意しなくても良いのではとなる可能性が極めて高い。


 現に司とユエルが考えた元々のストーリーではラスボスが一人でも全く問題無かったのである。だからこそカムリィに指摘された訳ではあるが。


「 (主人公の方は凄く良かったけれど、ラスボスの方はどんな感じなんだろう……?) 」


 内心ワクワクしながらユエルは司の言葉を待った。世界観やストーリー展開を考える能力で言えば彼はユエルよりも上かも知れない。


「まずシルベルスのラスダンは原初の災流庭園となります。ここは変わりません。そして僕かユエル先輩のどちらかは、その庭園最奥部で眠っている……世界の神様とします。もう片方はシルベルスにこれ以上被害が出ないように個人で行動している存在です」


「まぁここは王道か。個人で動いているなら、災害を食い止める為の方法が主人公たちと食い違う事によって、戦闘に発展させる事ができる。んでお前かユエルのどちらかは違う角度から主人公たちの敵になるって訳か?」


 普通であれば最後の大ボスを一人倒してハッピーエンドで終わる流れではあるが、ここから更にもう一人の倒すべきラスボスが介入する余地などあるのだろうか。


 一同がそんな疑問を抱く中、司は説明を続ける。


「はい。一応僕の中ではラスダンで待ち受けるボスの方をユエル先輩にして、僕の方は主人公たちに序盤から接触するキャラクターとして登場しようと思います。その時には敵か味方か分からない立ち位置で」


「あー、あれか? 例えば第一部で五か国を巡っている途中の要所要所で主人公の前に姿を現しては意味深な言動で惑わしたり、時には共闘したりする奴だけど正体が不明でどこか信頼できない……そんなキャラだろ?」


 司はカムリィの言葉に頷く形で肯定の意を示す。


 ゲームや漫画のフィクションの世界だけでなく、実際に転生協会の異世界運用でも用いられる展開の一つだ。


 敵か味方か分からず目的も不明の全てが謎に包まれた存在であるその者は、大抵が物語終盤に差し掛かるにつれて正体が発覚するものだ。そんな人間が倒すべき最後の敵と判明した時、その演出によっては鳥肌必至だろう。


「各国を救う為に必要なヒントを僕は彼らに提供する役割ですね。何故こいつは災害の根元を断ち切る方法を知っているのか、目的は何か……主人公たちはその謎も追いかける事になります」


「なるほどな。肝心要の敵になるまでの道のりはどんな感じなんだ?」


 最初は各国を救う手助けをする為に姿を現すのであれば、実は敵でしたと分かるのは第二部もしくは第一部におけるラストでだろう。


 司はラスボスの方の設定も同様に受け入れてくれるだろうかと緊張しながらも、カムリィの質問に答えた。

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