第4話
一通り説明を終えた琴葉は二人が評価対決の参加者に選ばれた事にマキナ同様嬉しく思う気持ちがある反面、一点だけ気になる事があった。
「でも……君もいきなり高い壁にぶち当たったな。だっていくら協会からの期待が高い新人くんとは言え、経験が足りない事に変わりはない。そんな状況下でいきなりユエルと評価対決とはね。こんなちんちくりんな子だけど、ラスボス役として見たら間違いなく天才だ。さすがに分が悪すぎる気がするけど」
「ち、ちんちくりん!? 失礼ですね! 私は……」
「ん~? どうした~?」
何か言い返そうとしたユエルだが、モデルみたいにスタイルの良い琴葉と、服の上からでも分かる大きな胸の膨らみを持つマキナを前にすると途端に自信がなくなっていく。
結果何も言い返せずしょんぼりとしてしまう事に。
「はぁ。何でもないです。本題に戻しましょうか。さっき琴葉ちゃんが話した懸念部分ですけど、別に私と司くんで評価対決をする訳じゃありませんよ」
声に覇気が無いままユエルは話す。
その回答に琴葉は驚きを見せユエルから司へと視線を移した。
「え? でも評価対決をするってさっき君が……あ、もしかして……」
評価対決を行うラスボス役として選抜されたのにも拘らず、司対ユエルの異世界運用バトルは行われない。この発言の意味に気付いた琴葉は『これは面白くなりそうだ』と言わんばかりの表情になる。
「はい。今回は転生協会初の『ダブルラスボスによる評価対決』です。僕とユエル先輩は敵同士じゃなくてコンビって事ですね。なので世界観とかも二人で考えたんですよ」
「え~! 何それ! めっちゃ面白そう! 対決っていついつ? 私たちも観戦できるの? と言うか対戦相手の二人は?」
転校生に対する休み時間中の質問ラッシュの如く、矢継ぎ早に質問を口にするマキナ。興奮のあまりテーブルに両手を付いて前のめりになっている。
「落ち着きなよ」
対して司は冷静そのものだ。面白いくらいに二人の間には温度差があった。
「一つずつ答えていくからさ」
「あぅ」
司はマキナの額付近に手を置いてそのままぐいっと彼女を押し戻す。
「まずいつからなのかっていう話だけど、三日後から異世界創生会議が行われて本番運用が一応二週間後って事になってるかな」
創生会議が長引けばその分異世界運用の開始も遅れる。現段階ではまだ予定の範疇である為、一応という言葉を使ったのだろう。
「次にマキナたちが観戦できるかどうかだけど、無理だね。評価対決とは言え遊びじゃないからね。スポーツとかとは違って、状況を確認できるのは審査員だけだよ」
「な~んだ。つまんないの」
「当たり前だろ。ま、司くんとユエルの勝利を祈りながら結果を待つしかないって事だな」
「テンション下がったからって探偵署の仕事サボっちゃだめですよ?」
マキナの探偵署における振る舞いを知っているユエルはジト目を彼女に向ける。
「わ、分かってるよ! う~……せっかく見れると思ったのになぁ」
「続けるよ。最後に対戦相手だけど、まさにダブルラスボスの評価対決における対戦相手としては『ラスボス』と言っても良い相手だね」
その発言だけで琴葉には対戦相手の二人が誰か分かったようで、驚きで目を丸くした。
「え? おい。まさか……」
「はい。手錠双璧『ムイ&ロア』……彼らが僕たちの対戦相手です」