第31話
リバーシは怪しまれる行動をしてはいけない。その絶対的な前提条件があるからこそ行動に制限が入る時もある。人によってはこの縛りにストレスを感じてしまうのだろう。
コハクは思い切って話そうと思ったのか、まるで司が初めて蒼の事を教えてくれた時のように意を決した表情になった。
「そうね……辞めた理由を話すのは全然良いんだけど、内容が内容なだけに人目に付かない所じゃないと無理ね。どうしても気になる?」
「えっと…… (ど、どうしよ……正直すっごい気になる……。でも人目に付かない所なんて私かコハクさんの家しか思い付かない……。い、いくら同性とは言えいきなり私の家に来ますかなんて言えないしコハクさんの家にしましょうなんてもっと言えない……!) 」
「ふふ。あなた本当に分かりやすいわね」
「えっ!? な、何がですか?」
「考えている事当ててあげましょうか? 正直凄い気になるけど人目に付かない場所なんてお互いの家くらいしか思い付かない……でもいきなり招待したりお邪魔したりする勇気なんて無い……こんなところかしら?」
あまりにも考えていた事をピッタリと言い当てられたユエルは、彼女が超能力者なのではないかと疑ってしまった。
「そ、そんなにしっかりと当てなくても良いじゃないですか!」
「だって分かりやすいんだもの。リバーシと転生協会会長の両方を経験している私からすればこれくらい何て事無いわよ」
観察力、洞察力、推察力、いずれの力もリバーシと転生協会会長を続けていく上で必要不可欠な能力だ。この二つを経験している彼女からすればユエルの考えている事など手に取るように分かるのだろう。
思えば司もユエルと初めて会った時に彼女が何を考えながら自分と会話し、接してくれているかすぐに分かっていた。
いくらユエルが分かりやすいとは言え、そう簡単に人の考えを言い当てるなど至難の業だ。やはりリバーシの者は皆超人の集まりなのだろうと思えてくる。
「うぅ……コハクさんの前で嘘は絶対に吐けないですね」
「ふふ。ラスボス役ならもう少しその辺も上手くならないとね。ま、それはそれとして。どうしても気になるなら来週協会に来た時に私の部屋にいらっしゃい。話してあげるから。さすがにあなた未成年だし、こんな夜遅くに私が家に行ったりお招きするのは……ね?」
コハクの言葉を聞いていると自分はまだまだ子どもだと実感してしまう。どちらの家にするかで色々と考えていた自分が少し恥ずかしくなってしまった。
「あ……た、確かにそうですね。分かりました」
「それじゃあまた来週お話しましょう」
それを最後にコハクの話は一旦区切りを迎える。その後はコハクが再び色々な話題を提供してユエルの住んでいるマンションの入り口に着くまで話が途切れる事は無かった。
さすがにユエルを一人で帰らせる訳にはいかないと思ったコハクが家まで送り届けたのである。
「すみません、わざわざ送って頂いて」
「そんなの気にしないで良いのよ。可愛い女の子と一秒でも長くお喋りしたかっただけなんだから。前々からすっごい美少女のラスボス役が居るなぁとは思ってたのよね」
ユエルに申し訳ないと思って欲しくなかったコハクは冗談ぽく言ったが、そういう気持ちが皆無かと問われれば嘘になる。
「ぅえっ!? え、えと……」
「ふふ。おやすみー」
「……っ……わ、私をからかいましたね!? もうっ! おやすみなさい!」
ぷいっとそっぽを向いてからコハクに背を向けたユエルは、そのままマンションの中に入っていく。そんなユエルの後ろ姿が見えなくなってからコハクはぼそりと呟いた。
「……皇真ユエル、か。ふふ……ようやく面白くなってきたわね」




