第24話
普段のコハクは遊んできた時間よりも仕事してきた時間の方が圧倒的に多いその経歴から、凛としているキャリアウーマンといった印象を与えてくるが、今のコハクは十歳程若く見える。
今の年齢から十歳も若くなったらそれはもうユエルよりも歳下の子どもなのだが、実際少女のような初々しい反応をするのだ。そう見えてしまっても無理は無いだろう。
「はい。分かりやすかったです」
「うぅぅ……。何か恥ずかしいわね」
仕事の時の『コハク会長』しか知らぬ者が今の彼女を見たら本当に同一人物かどうかを疑うだろう。だが人間のオンとオフの時の差など恐らく誰も変わらない。
「ちなみにコハクさんが好きな人って協会の人ですか?」
「ええ。あなたも知ってる人よ」
「わ、私も知ってる人……? う~ん……ハッ……も、もしかしてそれこそ司くん……!」
仮にそれが正解ならばコハクはユエルに対して自分と好きな人被りがしていないかの確認をした事になる。
その手の確認をする者は身を引いて切ない思いをするか、応援するフリをして裏切るかのパターンが王道ではある。だがコハクの返答によって今回はそのどちらの展開も訪れ無さそうである事が確定した。
「違うわよ。大体私、歳下はタイプじゃないし。五、六歳くらいは歳上が良いかな~」
「な、なるほど……? えっと……う~、わ、分かりません。もう少しヒントをお願いします」
これまで異世界運用をする上で様々な人と仕事をしてきたユエルには、候補となる男性が多数頭の中に浮かび、絞り切る事ができなかった。
ユエルの知っている人でコハクよりも歳上など、一応ヒントにはなっているが特定の誰かを予想可能なレベルにまで絞り込める程のものでは無い。
そのまま正解を聞き出しても良かったが自力で答えに辿り着きたい気持ちが勝り、更なるヒントをユエルは要求する。
「……えっとね」
コハクは恥ずかしいのか髪の毛の先を指でくるくると弄りながら、ユエルとは決して目を合わせずにその人の特徴を小さな声で言っていく。
「鋭い目つきと八重歯がどことなく狼を彷彿とさせて……」
「ふんふん」
「身長は一八〇センチ超えてて……」
「なるほどなるほど」
「初対面時は怖い印象を与えるかも知れないけど、話してみると意外とそんな事無いどころか寧ろ話しやすい上に凄い優しくて、誰よりも周りの事が見えていて、ついでに頭の回転も異常なくらいに速くて……」
「……」
「年齢は私より六つ上で……」
「もしかしてカムリィさんですか?」
「……。正解です……」
顔を真っ赤にして照れるコハクは本当に可愛らしい。正解した喜びを上書きしてくれるだけの破壊力があった。
「えっと……その……だ、誰にも言わないでね?」
「は、はい……! わ、分かってます!」
ユエルの返答にコハクは若干の照れを残しながらも満足そうに微笑んだ。今まで見た事無いコハクの顔を見たユエルは思わず見惚れてしまった。
「 (『転生協会会長』の威厳ある姿しか知らなかったけど……え……凄く可愛い……コハクさん……) 」




