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第21話

 司が候補生から外された後に知り合ったとなれば、気になるのはそのきっかけだ。


 ユエルたちが良い例だが誰かが会わせようとしない限り、普通の協会メンバーはコハクと仲良くなるイベントなどまず発生しない。琴葉は例外として。


 そんな中司にはそのイベントが訪れた。一体どんなきっかけで彼らは仲良くなったのか知りたいところだ。


 コハクが元リバーシである事実があまりにも衝撃的過ぎて話題が少し脱線してしまったが、ここでようやく琴葉が司にしていた二人の出会いに関する質問の答えが得られそうである。


「司くんがコハクの正体を知る手段は無いだろうから、コハクの方から司くんに接近したと予想するけど、当たっているかい?」


「その通りよ。彼……リバーシ候補生をクビになった後に一回協会から離れたでしょ? ウチを正式に受け直す為に。まさかそのまま協会に残って活動してくれる気持ちがあるとは考えていなかったから嬉しくてね。彼に興味を持ってオーディションから帰る時に話し掛けたのよ。実は私、元リバーシなんだけどっていうカミングアウト付きでね」


「いや本当に……最初は何かの冗談かと思いましたよ。まぁでも色々話しているとリバーシの関係者でしか知り得ない話とか飛び出てきたから信じるしかなかったんですけれど」


「な、なるほど。ちなみにその時お二人はどんなお話をしたんですか?」


 ユエルの質問にコハクは斜め上を見ながら当時の会話を思い出す。


「んー……別に大した事は話してないわよ? 会長として……そしてお互い辞めた身ではあるけれど一応リバーシの先輩として、合格してると良いわね~とか、協会に受かったら身分とか気にせずいつでも相談に乗るからね~とか、そんなテンプレみたいな会話よ」


「そんな感じでしたね。一回落ちた時は色々と気にかけてくれましたし、シンプルに嬉しかったです」


「ふふ。どういたしまして」


 一度落ちた時は現実を知ってさすがに落ち込んだりもした。そんな時励ましの言葉は司にとって何よりも嬉しく、次も頑張ろうと彼を奮い立たせてくれたのだ。


「コハクさん以外にも、ユエル先輩に、琴葉さんに、あとマキナ……みんなから激励を貰って本当に嬉しかった。あの時はありがとうございました」


 今日は司の転生協会合格を祝ったパーティーであり、改めてお礼と感謝の気落ちを伝えるには絶好のタイミングだろう。


 自分は本当に良い仲間に恵まれたと思った司は、自然とそんな言葉を口にしていた。


「そんなお礼を言われる程じゃありませんよ。司くんには合格して欲しかったですし、当然の事をしただけです!」


「そうそう! それに司くんが居ないのちょっと物寂しい感じがしたしね~」


「ああ。特にユエルなんて司くんが落ちたって知った時に『こんな時何て言葉を掛けてあげたら良いんでしょう?』とか、『合格するコツとかって教えても不正扱いになりませんよね』とか、すーごい真剣な顔で相談されてさ。いや~本当に合格して欲しかったんだろうな」


 ユエルの真似を挟みながら琴葉は当時の彼女を解像度高めに再現した。


「だ、だって……蒼ちゃんとの約束もありますし……そ、その、司くんにはこんな所で挫けて欲しくなかったんですよ」


 照れながらユエルはもごもごと話す。


「そうですね。確かに最初の第一歩で躓いていたら蒼に顔向けできないですし……本当にありがとうございます。正直結構落ち込んじゃってたので、励ましの言葉一つ一つがかなり心の支えになってましたよ」


「本当ですか? それは良かったです……えへへ~」


 自分の鼓舞がしっかりと司の支えになっていたのかどうか不安だったユエルは、今その不安を取り除く答えを聞いたような気がして嬉しさのあまり思わず顔が綻ぶ。

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