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エピローグ

「い、いや別に。常連さんも居るんだなって思っただけよ! さすが密輸組織のボスをしてるだけあるわね。金も運も持ち合わせてるなんて」


 エマは声が震えた。当時そのボスを担当していた界庭羅船メンバーが誰なのかが明らかになったのだ。それはつまり彼女の両親を殺害した犯人が判明したと言える。


「ちゃんと勉強はしてるみたいだね。界庭羅船が依頼を受けるまでの流れを」


 どうやらエマが口にした感想から彼女がしっかりと学んでくれた事を察したようだ。だがエマからすればその発言は皮肉にしか聞こえなかったようで、イラついた様子で言葉を返す。


「あんたたちが本命の仕事を任せてくれないせいで時間はたっぷりあったからね。犯罪者側からあたしたちに接触できる方法なんて無い以上、こっちからその世界で金がありそうな犯罪者に接触するしかない……つまり犯罪者たちが界庭羅船を味方にできる条件は金持ちであるだけでなく、人生で一度あるか無いかレベルの豪運が必要って事でしょ?」


「せぇ~か~い。ぱちぱちぱち~」


 無表情で小さく拍手をし、その時の音を口で言ったクオリネはエマをバカにしているようにしか見えない。少なくともエマはそう感じてしまったようで、案の定怒り出す。


「あんた、あたしの事絶対バカにしてるでしょ!? そうやってあたしを子ども扱いできるのも今の内よ! 圧倒的な実力ですぐにあたしに対する評価を変えてやるんだから!」


「うんうん。子どもは元気が一番ね」


「うぎーッ!」


 エマの反応を内心では楽しんでいるクオリネは表情にこそ出さないが、心の中ではクスクスと笑っていた。エマがその事に気付く事は無い訳だが。


「それじゃあエマちゃん。次の話だけどね」


「ちゃん付けすんな! 気持ち悪い!」


「リバーシって知ってるでしょ? ついこの間までお邪魔していたアルカナ・ヘヴンという世界において、諜報員の役目を担っている人たちで構成された組織だよ。どうやらこの密輸組織の二代目ボスは、リバーシ試験の元関係者らしくてね」


「ええ、知ってるわ。リバーシってあんたが一発で仕留めた天賀谷司が、元々所属していたとこでしょ? そんな組織の加入試験関係者だったなんて、意外と世界って狭いのね」


「そうだね。ところでさっき、初代ボスが今の二代目ボスの為に護衛依頼を界庭羅船にお願いしたって話したの覚えてる? レイクネスが担当したって件。その時の護衛任務なんだけど、最終的には二代目ボスがエンペル・ギアのトップからも敵視されて追われる状況になっちゃってね」


 界庭羅船の一人が護衛に付いていた以上、その身に危険が迫っても何とか回避はできたのかも知れないが、エンペル・ギア総帥からも目を付けられてしまうとは、向こうからすればなかなかに面倒な事態であると言えるだろう。


「そうなの?」


「うん。まぁ色々あったんだよ。その色々部分は今回とは関係無いから割愛するとして。余計な敵を増やしちゃって色んな組織に追われる羽目になった訳だけど、私たちもずっとその人に付きっ切りとはいかないからね」


 その話を聞いたエマは全てを理解したようで、うんうんと頷いてから口を開いた。


「なるほど。途中で護衛期間が終了したけど、またお金が溜まったから今回三回目の依頼をしてきたって訳ね。で、あたしがエンペル・ギア含め、そいつを追う奴らから守れば良いと」


「その通り。三回目もレイクネスを担当に付けようかなって思ったんだけど、その人の護衛飽きたって言われちゃってね。そろそろあなたに任せてみようかなって思ったの。ちなみに今回は護衛以外にも仕事があるんだけど、その辺は今私の方で話を進めている最中だから、まとまったらあなたに共有するね。今日のは頭出しってところ」


「……了解。 (パパとママが追ってた密輸組織のボスを守るなんて絶対に嫌だ。でも、これが界庭羅船に入れるチャンスなんだったら、あたしは……! やっと……やっとこの時が来たんだ。今回の依頼を完璧にこなして、界庭羅船に入った暁には……レイクネス! お前を絶対に殺して、パパとママの仇を取る……!) 」


 エマは静かに波音を奏でている海を見つめながら、心の中でレイクネスに宣言した。


 彼女が引き受ける事になったシャックス二代目ボスの護衛任務。この任務が司たちをも巻き込む戦いに発展するとは、この時、まだ誰も予想できなかったのである。






 ラスボス役の異世界奇譚 第二章『手錠双璧』編 完


 第三章『黎明期』編へ続く ※詳細は次回予告へ

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