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第201話

「た、確かに言われてみればそうかも!」


「納得してくれたみたいで何よりだよ。 (ただ今回の評価対決の件、少し気になるな。何か重要な事を隠されている気がしなくも無いが……) 」


 シリアスな顔で考え込んだ琴葉を見たマキナは、彼女とは対照的に呑気な声を上げる。


「どしたの、琴葉ちゃん。そんな難しそうな顔をして」


「え? ああ、何でもないんだ。気にするな」


「……? そう? まぁ良いや! ねねね! お腹空いたし、ご飯にしない?」


「そうだな。今日はどうする? 久し振りにラーメンでも食べに行くか?」


「ラーメン! 良いね! そこにしよ~!」


 子どものように無邪気にはしゃぐマキナを見ていると、真剣にあれやこれやと考えている自分がどこかバカらしくなり、琴葉は思わず自分に対して笑ってしまった。


 どれだけ思考を巡らせたところで解決に繋がるだけの情報を持ち合わせていない気がした事も相まって、琴葉はそれ以上評価対決について考える事を止めたのだった。




 時を同じくして、アルカナ・ヘヴンとは異なる世界でエマはクオリネに会っていた。


 この世界の現在時刻はどうやら深夜のようで外はすっかり暗闇であった。場所は海の砂浜であり、暗い中の海がどこか不気味なのは全世界共通のようだ。


「どう、エマ。界庭羅船には慣れた?」


「慣れるも何もないでしょ。あんたたちは普段から世界中の警察組織から犯罪者を守ってるのに、あたしはずーっと調査やら書類業務やらで、全っ然! 界庭羅船らしい事させてもらってないんだから! ホントにさぁ、バカみたいな質問しないでよ。性格悪いわね」


 どうやらエマのこの態度は界庭羅船メンバーに対しても変わらないようだ。クオリネもそんな彼女の言動にいちいち目くじらを立てたりはせず、普通に会話を続けた。


「うん。そんな態度を私相手に取れるなら、もう慣れたみたいだね。何より何より」


「そんな前置きはいいから用件だけを言いなさいよ。あたしに何の用なの?」


「せっかちだね、本当に。……あなたに本当の初仕事を与えようと思って呼んだの」


 その発言を聞いてエマの眉がピクリと動く。クオリネが言った言葉の意味を理解したからだ。


「それって初めてあたしが担当する依頼者が居るって事かしら?」


「その認識で合ってるよ。分かっているとは思うけれど、これはあなたにとって正式メンバーになれるかどうかの試験でもあるの。チャンスは一度きり。覚悟は良い?」


 挑発にも似たクオリネの表情と言葉にエマは胸を張って自信満々に返答した。


「良いに決まってるでしょ。寧ろやっと来たかって感じよ。ほらほら、早く依頼者の詳細と具体的な仕事内容を教えなさいよ」


 エマはワクワクが抑えられないようで、興奮した様子でクオリネに詰め寄る。


「はいはい、今教えるから。まずは出身世界ね」


 あらゆる世界を行き来して活動をしている彼女たちにとっては、まず依頼者がどこの世界の人物なのかという話から始まる。こうして聞くとやはり活動範囲の規模の大きさが桁違いだ。


「出身は『ヴァルハリア』という世界ね。ここ、あなたの出身世界でしょ? 最初だし馴染み深い世界の方が良いと思って」


「そうね。お気遣いどうもありがとう」


「いえいえ、どういたしまして。で、今回の依頼者はヴァルハリアの警察組織が長年追い続けている密輸組織『シャックス』の二代目ボス」


「……ッ!」


 シャックスの名前が出た瞬間、エマは心臓が握り潰されたのではと思える程の衝撃が全身を駆け巡った。死んだ両親と深い関わりを持つ密輸組織だ。当然の反応と言える。


「実はシャックスのボスが依頼人になるのは今回が初めてじゃなくて、三回目なの。一回目は今から七年前……確かヴァルハリアの警察組織に尻尾を掴まれそうだからって事で界庭羅船に依頼してきたんだったかな」


「 (七年前……間違いない! パパとママが殺された時期……!) 」


「二回目は二、三年くらい前。自分はもう引退時だから、二代目を代わりに護衛して欲しいとお願いされた。一回目も二回目も初代ボスが依頼人で、当時は確かレイクネスが担当していたよ。また依頼料が溜まったから、再度依頼してきたってところかな……って、ん? どうかした?」


 クオリネがエマの異変に気付き、小首を傾げる。変に怪しまれてはならないと思ったエマは何とか誤魔化そうとした。

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