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第198話

「僕、先輩に謝らないといけない事があるんでした」


「どうしたんですか、急に」


 何か司が謝罪するような事をされた記憶はなく、ユエルは不安そうな顔で司を見つめる。


「実は、ですね……」


 ユエルに見られている中、司は肩にかけていたカバンの中からボロボロになっているミサンガを取り出して、それをユエルに見せた。


「すみません! 手錠双璧と戦っている最中に、先輩から頂いたミサンガ……こんな風になっちゃいまして……」


 評価対決の為に折角作ってくれたミサンガが、壊れてしまったのだ。いくら激しい戦闘だったからという理由付きとは言え、申し訳無い気持ちで彼は満たされていた。


「これ……」


 ユエルは悲しむでも怒る訳でもなく、司が出したミサンガを見つめた。司はそんなユエルを見て彼女が負の感情を出す前に謝罪をしようと強く思った。


「いや、その……本当にすみませんでした。本当は壊さないように戦いたかったんですけど、さすがに開花適応者二人を相手に庇いながら戦闘を行うのは至難の業でして……ああでも、これはただの言い訳ですね。……せっかく先輩が今回の評価対決の為に手作りしてくださったのに、僕は……」


「えっと……謝る必要なんて無いですよ?」


「え?」


 司が申し訳無さそうに謝っている姿を見たユエルは、キョトンとした様子であり司の予想とは異なる反応を見せてくれた。


 彼女の性格を考えると怒ったりあからさまに悲しんだりはしないだろうが、さすがに少々残念がりはするだろうと思っていた司は反応に困ってしまった。ユエルは気を遣ってそのような発言をしているようには見えず、本気でそう思っているようだ。


「それだけ司くんが必死に戦った証拠じゃないですか。寧ろミサンガを優先して負けるなんて事になった方が私は嫌です。あの時、司くんは私やシルベルス、主人公さんを守る事だけを考えて一心不乱になったって事ですよね。それって凄くカッコ良い事だし、素敵な事だと私は思いますよ」


「……」


 まさかそんな言葉を掛けられるとは思っていなかった司は思わず固まってしまった。


 ユエルはなかなか言葉を返してくれない司を見て不安な気持ちになったのか、オドオドしながら確認を取る。


「あ、あの……もしかして私、変な事言いましたか?」


「いえ、違うんです。まさかそんな風に受け取ってもらえるなんて思ってなくて」


「そういう事でしたか。ミサンガなんてまた作れますし、そんなに申し訳無さそうに思わなくても大丈夫ですよ!」


 司を安心させる為にユエルは笑顔でそう言った。彼女の言葉と表情からその気持ちに嘘偽りが無い事を悟った司はホッとする。


「ありがとうございます、先輩。このミサンガは大切に保管しておきますね。えっと、そうですね……異世界運用と手錠双璧戦を先輩と一緒に乗り越えた記念品として」


「はい! 確かに激戦を乗り越えた勲章みたいな感じがして良いですよね!」


 気持ちがリンクしたのかユエルはテンション高めに司の発言に同意を示した。確かに見方によっては司が手しているミサンガは、勲章として輝く代物に進化を遂げたのかも知れない。


「勲章ですか。良い響きですね、それ」


 司はそう言うとミサンガを再び大切そうにカバンの中へと閉まった。家に持ち帰った後は恐らく小型のジップロックにでも入れて保管しておくのだろう。


「あ、そうだ。先輩。今日の夜ですけど時間ありますか?」


「え……は、はい。特に予定は入っていませんけど……」


「オッケーです。……ねぇ! ムイとロア!」


 何を思ったのか司は前方を歩く二人に声を掛けた。

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