第193話
「私、少しでも憧れに……理想に近付きたいんです。その為にも私は、自分自身の恐怖に負けたくなんてありません。コハク会長のおかげで手にした開花適応の力……界庭羅船対抗の為に使えるなら、私は何度だって自分の中の恐怖に打ち勝ってみせます!」
「そう。ふふ、やっぱり、私の目に狂いは無かったわね。……ありがとう、ユエル」
「はい!」
やはり開花適応は來冥力だけでなく様々な面でその者に成長をもたらすようだ。ユエルは今回の戦いを経て一回り成長したように見える。
「それじゃあ次に……司」
「はい」
「あなたにも訊こうかしらね。質問は同じよ」
ユエルの加入に喜びを見せていたコハクはすぐに気持ちを切り替え、司も新旗楼へと誘いたい意思を見せる。
「答える前に一つ良いですか。コハク会長、前にユエル先輩だけを新旗楼に誘っていたみたいですね。その時に僕を呼んで一緒に誘わなかったのって……」
「ああ、それ? だってあなた、そんな事言ったら絶対に『先輩をそんな危険な世界に飛び込ませる訳にはいかない!』って言って大反対するでしょ? ユエルがあなたの言葉に流されて自分の意思とは無関係に即断ったらどうするの? 彼女には他人の意見に左右される事なく、自分自身の気持ちで答えを出して欲しかったのよ」
「コハク会長……そんな事考えてたんですね」
「やっぱりですか。どうせそんな事だろうと思いましたよ。開花適応した今ならイエスだろうとノーだろうと、先輩の意思は固いものになっていて、僕の意見で考えを変えるなんて事はしなさそうですしね」
「その通り!」
彼女の行動に気まぐれは存在しないのだろう。どんなに謎めいた言動だろうとその言葉や行動の裏には必ず理由がある。今回の件で司にはそれがよく分かった。
「それじゃあ疑問も解決したところで答えさせていただきますね。……僕も先輩と同じです。新旗楼に加入したいと思います」
「本当に?」
「はい。界庭羅船のような奴らを野放しにはしておけませんし、それに……」
そこで司は一拍間を置き、続きを話した。
「僕実は過去に『とある人たち』と出会って、その時に彼ら言ってたんです。今から二、三年後には自分たちの目的が『界庭羅船の調査』から『界庭羅船を倒す事』になっていてもおかしくない……もう『それ』が現実味を帯びた話になっているかも知れないと。そして都合がついたら、また僕に会いに来るとも……」
司の話に一同は衝撃を受ける。
界庭羅船は一般人が生半可な気持ちで挑んだり、ちょっとした正義感でどうにかなる相手では絶対に無い。それはこの場に居る誰もが理解していた。
それなのに司が過去に出会った人たちは、界庭羅船撃破がもうただの夢物語では無いと彼に語っていたようだ。
一体そんな事を豪語できるとは何者なのか。そして何故司はその者たちと知り合えたのか。コハクたちは口にこそ出さなかったが共通の疑問を抱いていた。
「僕がその人たちに出会ったのは今から二年半くらい前です。つまりそろそろ約束の時期なんですよね。もしも彼らと再会できたら界庭羅船の件が今どうなっているかも話すと思いますし、お互いどれだけ成長したかを確認し合う事もするでしょう。その時、新旗楼の話ができたら良いなって思ってるんです。正直なところ……僕は戦力も知識も経験も彼らや界庭羅船には遠く及ばないですけど、それでも界庭羅船の為に本格的に戦う意思を持った姿を彼らに見せたいんです」
「……。ねぇ司。あなたが過去に出会って、時期的にそろそろ再会できるかも知れない知り合いってもしかして……」
コハクはずっと司の知り合いが誰なのかを考えながら話を聞いていたのだろう。その思考の中で彼女は可能性がありそうな存在に行き着いた。
そして同時に体が震えた。もしも自分の予想が当たっていた場合、司はとんでもない大物と繋がっていると言えるのだから。




