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第19話

 司の発言でホッとしたユエルは安心した気持ちになる。


「そ、そうなんですか? なら良かったです」


「それでそれで? リバーシって普段どんな事してるの? すっごい気になるんだけど!」


 もう我慢できないといった様子のマキナは目を輝かせながら興奮している。貴重過ぎる話がこれから聞ける事実に自制心が一切働いていない。


「簡単に言えば正体を隠して各機関・組織・団体へと潜り込み、潜入先の監視と情報収集がメインかしらね。各先において越権行為や職権乱用の有無確認、報告内容の真偽確認、様態と実態のギャップのチェック、動向の変化報告に、時と場合によっては個人データの取得をする事もあったわね」


「わぁ……。大変そうだけど面白そう!」


 探偵署を選んだマキナは元々そういうのに面白味を感じるタイプなのかも知れない。遊びで無い事は当然頭では理解しているのだろうが、どうしてもその感情が前に出て来てしまうのだろう。


 大体の業務内容を聞いた琴葉は、その内の一つにスポットライトを当てて協会内でもしそれが行われているとしたらと思考を巡らせる。


「動向の変化報告って事は、もしかして転生協会内に私たちが把握していないリバーシの人が居た場合は……」


「ええ。私はもう離れた身だから予想でしか無いけれど、天賀谷蒼の異世界運用後に協会では大きな変化が起こったでしょう? 協会内や世間にその情報が公開されるよりも早く、エンペル・ギアはその情報や過程の動きをまるでその場で見ていたかのように把握したでしょうね。リバーシは彼らの直属の諜報機関なのだから」


 エンペル・ギア。五大機関の一つであり、その中でも最上位に輝く、まさにこの世界の頂点とも言える最高峰機関だ。


 最大規模の機関に属している彼らは、一般人とは住む世界が違う。つい最近まで候補生として牢政に身を置いていたからこそ司はその事を強く感じていた。


「な、何と言うか恐いですね。特に誰がそうなのか分からない所が……」


「そうね。普通はバレない様に行動するものだからあなたの言うようにそこが私たちにしてみたら一番の恐怖ってところかもね」


「僕の事見ながら言うの止めてもらっても良いですか? これでも二年は頑張ったんですから」


「ふふ。そう言えばそうだったわね」


 本来であれば蒼の異世界運用でも司が冷静さを保っていればリバーシの適正無しとは判断されず、今もスパイ活動を続けていただろう。やはり熱くなりすぎるとロクな事にならないという事だ。


「そだ! ねねね! さすがに転生協会レベルの大規模の場所にさ、リバーシの構成員がゼロって事は無いと思うんだ! 誰がそうなのかコハクちゃんは知ってるの? あ、誰かまでは答えなくて良いよ! て言うか答えられないだろうし」


「残念ながら知らないわね。誰が構成員なのか、そして一体何人が潜入しているかもね。これは私だけに限らず、普通は把握できないものよ。知る手段が無いもの」


「そうなんだ~。まぁ誰がリバーシか知っていたらスパイの意味が無いもんね」


 マキナの言う通りリバーシは一言で言えば諜報員やスパイというものにジャンル分けされる。そのような存在が潜入先の相手に最初から正体を知られていては前提から既に崩れているようなものだ。


 コハクは一回だけうんと頷き、更に掘り下げて情報を提供してきた。


「その通り。分かってるじゃない。ただ例外は一応あってね」


 この場における例外とは何を指すのだろうか。


 コハクは誰がリバーシのメンバーなのかは自分だけに限らず普通は把握していないと言っていた。その点に対する例外という話であれば恐らく例外的に誰がメンバーの一人なのかを把握している人は居る、という事だろう。

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