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第186話

 いずれにせよ來冥者としてのユエルの事をよく知る人物に話を聞き、その情報を参考材料にする他解決手段は無いだろう。そう判断したカムリィは調査の翌日となる日――即ち司が復帰した日に彼にこんな質問をしたのだ。


 司から見てユエルは才能ありだと思うかどうかを。あの質問はカムリィが自分の推理に確信を持ちたくて訊いたものであったのだ。


 当然急にそんな質問をされた司は疑問顔であったが、それでも親切に答えてくれた。実際にユエルの側で彼女の來冥力を見た結果、才能ありだと彼は判断していたようだ。


 あの瞬間、カムリィの中で一気に不安は解消され、逆に自信が湧いたのだ。


 カムリィの言葉を聞いたコハクは満足そうに頷いた。こうして実際に聞くとやはりカムリィを信じて良かったと思える。彼ならば些細なヒントから答えに辿り着けるはずだと。


『誰かを開花適応させたがっているという予想をした後、今回の評価対決が計画の舞台になると考察したあなたは、ラスボス役の中で該当する人物はユエルしか居ないと結論付けたのね』


『正直なところユエルが開花適応者になれる素質がある人間かどうかまでは分からなかったんです。でも司に訊いたら、あいつ言ってました。ユエルだったらきっとって。それで俺確信したんです』


 自分一人の力で辿り着けたと豪語するつもりはカムリィには無かった。だからこそカムリィは司の名前も出していく。


『そう。司もあなたの推理に一役買ったって訳ね』


『ちなみに司が協力してくれる事も読み通りですか?』


『ふふ。さすがにそこまでは無理よ。あ、本当だからね? そんな疑いの目で私の事を見ないでよ!』


『ま、そういう事にしておきますよ。……それよりコハク会長』


 カムリィは緊張からの解放感と全問正解できた達成感を十分に味わったのか、どこか気が抜けてしまったかのような表情から一変、再び真剣な顔付きになる。


『あなたが用意した謎は全部解けました。約束通り、コハク会長が鴻仙総監と組んで何を計画しているのかを教えてください。そしてその計画に俺を混ぜていただきたい。大物と大物が裏で動いている訳なんですから、相当な事を企てているんじゃないですか? もし俺も役に立てるなら、これ以上の喜びは無い。俺がリバーシに入った理由なんて刺激が欲しかったから以外に無いですからね。正直刺激の度合いで言ったら、こっちの方が面白そうです』


 カムリィのこの言葉に嘘は無かった。


 エンペル・ギアに行った際に彼はムイとロアを調べる理由として、コハクの謎を解く上で必要だと告げていた。その謎を解くとコハクの計画に参加でき、リバーシの活動の幅が広がると語って説得をしたのだ。


 だが正直あの発言は舌先三寸で誤魔化したに過ぎない。


 実際の所は単純にコハクたちが何を計画しているかに興味があり、自分がアルカナ・ヘヴンの重鎮の役に立てるかも知れないと考えるだけでワクワクするからという、とてもエンペル・ギアの前では言えないものだった。


 もしも計画に混ぜてもらえばその代償としてコハクには正体がバレてしまうが、それでも構わないとカムリィは考えていた。コハクならばきっと周囲には一切漏らさずボロも出さずに黙ってくれるだろうという絶大な信頼を寄せていたからだ。


 これはカムリィの持論だが、結局のところ不特定多数にさえバレなければ良く、信頼を置ける人には話しても問題無いのではと考えていた。


 エンペル・ギアの前でそんな事を語った日には、正座で数時間説教コースになりそうなので口が裂けても言わないが。

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