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第182話

 まるで推理物の探偵がトリックを解説している時のようにカムリィは語った。


 それはコハクがどんな思考の果てに今日この日を迎えたのかを明確にしたものであり、頭の中を覗いてみたかのようだ。


 コハクは余計な質問は一切入れず黙ってカムリィの話を聞いていた。今彼女はどんな気持ちでいるのか、カムリィには分からない。だが手応えは確かに感じた。


『どうですか? コハク会長。これが……俺が辿り着いた答えです』


 そう言って締め括ったカムリィはコハクの言葉を待つ。正解はしているはずだが、実際に彼女の口から告げられるまでは安心できない。


 やがてコハクは小さく拍手しながら口を開いた。


『さすがね、あなたは』


『……! じゃあ……』


『ええ。おめでとう。完璧な回答よ。私の思考回路そのままなんだもの』


『~~~っ! ……しゃあ……!』


 コハクの言葉を聞いた直後、緊張から解放されたのか、嬉しさも相まってカムリィは右手をグッと握り締めてガッツポーズを取った。


 どう頑張ってもコハクの考えている事など読み解けないと思っていたカムリィは、自分の調査と幸運で掴み取ったこの結果に感情を偽る事なく表に出す。その反応がどこか可愛らしくてコハクは思わずクスクスと笑った。


『ねぇカムリィ』


『何です?』


『一つ聞かせて。ユエルを開花適応させる為に私は評価対決を行おうとした……これにあなたはどうやって辿り着いたのかしら?』


 カムリィは明らかに確信を持って答えていた。きっと彼はコハクの真の狙いに気付く為に必要なヒントをどこかで手に入れていたのだろう。コハクはそこが気になっている。


『ああ、それですか』


 既に五問全部正解したカムリィは延長戦のような感覚で、彼女の質問に対し気楽に答えた。


『俺がコハク会長に許可をいただき、協会内で調査をしたあの夜の事を覚えていますか?』


『ええ』


 コハクにとってはある意味で忘れられない夜であった。遊びで無いと分かっていても好きな人と一緒に居られたのだ。ロマンチックな展開が訪れなかったとしても、内心はドキドキとワクワクで満たされていた。


 当然そんな事、カムリィは気付いていないが。


『あの時俺は信じ難い手掛かりを得たんです』


 カムリィはその時の事を思い出しながらコハクに説明をした。


 あの夜、カムリィが調査しようとしたのはこれまで行ってきた異世界運用で創生した、各世界の情報についてだった。


 彼がそう思い立ったキッカケはコハクとの会話だ。界庭羅船について話していた時に彼はとある発言をコハクから聞いた。それは協会が普段から生み出している異世界は自然に存在している世界とは環境が違うというもの。


 この時点でカムリィはコハクが鴻仙と何かしらの計画を進めている事は知っている。そして今回の評価対決はその計画に関わっている事も。そんな状況下の中で彼はふと思ったのだ。もしも今回が初ではなく、普段の異世界運用からその計画に必要な何かを行っていた場合、過去の人工異世界に手掛かりが潜んでいる可能性は普通に有り得るのでは、と。


 総責任者としてあらゆる異世界運用に触れて来たカムリィは、その道のプロだ。担当外の人工異世界含め、過去の異世界を片っ端から調査、比較検証する事で、コハクが進めていた計画の痕跡と呼んでも良い情報に辿り着けるかも知れない。


 ここで言う計画の痕跡とはすなわち、協会内で創り上げてきた人工異世界の常識とは異なった環境の異世界の存在だ。


 柔軟な発想や突拍子も無い考えが突破口を開く事は少なからずある。どうせこれから家に帰っても風呂に入ってから夕飯を食べ、寝る事くらいしか無いのであれば、その可能性に賭けてみても良いはずだと思ったのだ。


 そんな思考の元でカムリィはコハクに夜の協会での調査許可を求めた。


 コハクのちょっとした発言からそこまで思考が至るカムリィは、リバーシに在籍しているだけはあると言えるだろう。

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